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スパイラル 〜螺旋の先〜【気象系BL】

第11章 ふたりのカタチ


【潤side】

「…うちに行ってもいい?」

恐る恐る訊ねると、少し逡巡するように瞳をさ迷わせて。
それでも、黙って頷いてくれた。

拒否されなかったことにホッとしながら、アクセルを踏んで、駐車場を出る。

なにかを話そうと思ったけど、彼は表情を隠すように窓の外に顔を向けていて。
結局、話しかけることも出来ずに、無言のまま車を走らせた。

途中、翔くんの携帯の着信音が鳴り響いた。
彼はポケットから携帯を取り出すと、ディスプレイをじっと見つめて、そのまま鞄の中にそれを突っ込んだ。

「誰から?」
「相葉くん」
「出なくていいの?」
「…うん…」

それっきり、また沈黙が落ちて。

そのまま車はマンションの駐車場へと滑り込んだ。

「パスタでいい?」
「うん」

家に入っても、交わした会話はそれだけ。
俺が急いで夕飯を作る間、翔くんはぼんやりと壁の方を見ているだけだった。

向かい合って食べる間も、会話は一言もない。

なにか言わなきゃ。
どうにかして、翔くんを繋ぎ止めなきゃ。

気ばっかり焦る俺とは対照的に、彼はひどく凪いだ瞳で静かにそこに佇んでいる。

いつもは、うめぇ!って笑顔で食べてくれるのに。

それがあまりにも最近の彼の様子とは違いすぎて。
さらに不安を掻き立てられた。

食べ終わって、ソファに座る彼の横に腰を下ろしてその肩を抱き寄せる。
いつもなら、そのまま全てを委ねてくれるのに。
肩に回した腕を外されて。
少し身体を離して、俺を真正面からじっと見つめた。

「潤…」

彼の唇が、なにか言葉を紡ごうとして。

でも、聞くのが怖くて。

噛み付くように、キスをした。

「…んんっ…やめ…」

身を捩って逃れようとするのを、力任せに引き寄せて、片手で顎を掴んで逃げられないように固定する。

舌を差し込もうとしたけど、堅く唇を引き結んでいて、出来なかった。

なんで、拒むんだよ…
今まで、どんなに乱暴にしたって、最後は受け入れてくれたじゃないか……

鼻の奥がつんとして。
頬を冷たいものが流れて。

唇を離すと、その胸に顔を押し当てた。

「…潤…」
「嫌だ…捨てないで…俺を独りにしないでよ…」

涙が、勝手に零れ落ちる。

翔くんは、黙って俺にされるがままだったけど。

やがて、おずおずと腕を背中に回してくれて。

黙ったまま、優しく抱き締めてくれた。


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