第10章 Tears
【和也side】
泣き崩れる俺の身体を抱き留め、
相葉さんが抱き締めていてくれた。
俺のために、何を置いても駆けつけてくれる...そんな彼の存在は、救いだった。
捨てられた心が、
悲しくて、苦しくて、
悲鳴をあげて砕け散った。
いつかはこんな日が来ると、
分かってる、なんて言ってたくせに、
ホントにそうなると、俺はもう、ひとりで立っていることさえ出来ないんだ。
「...ニノ...部屋に入ろう」
相葉さんが俺を抱えて、
リビングのソファーに座らせた。
しゃくりあげる俺に、
「コーヒー入れるよ...」
...人ん家なのに、慣れた手つきで、コーヒーを落とし始めた。
相葉さんが入れたコーヒーは、いつもより、少し濃かったけど、なぜか心に染みた。
深夜のリビング....
ふたりとも何も話さない。
「....聞かないの?何があったか...」
ぼそっとそう言った。
「うん...いいよ、ニノが話したくなったらで..今夜はずっと、付き合うよ...」
「相葉さん...」
「どうせさ、翔ちゃん今夜帰ってこないし...」
帰ってこないって...何で?
泣き腫らした目で相葉くんのことを見ると、彼は自虐的な笑を浮かべて言った。
「今夜は、松潤のとこに行ってるんだ..」
「え...?嘘でしょ..」
翔ちゃん...相葉さんに話してから松潤に会いに行くの?そんな酷いこと....
驚いて言葉も出ない俺に、相葉さんは、
「翔ちゃんさ、もう普通じゃないんだ...前の翔ちゃんは、そんなこと平気で出来る人じゃない....
心が壊れちゃってるんだ。それを直せるのは、残念だけど、俺じゃない....
俺が大好きだった翔ちゃんは、今はもういないんだ...」
....相葉さん...
あなたの心も...壊れそうなんだね...
縺れてしまった糸に、がんじ絡めになっている俺たち5人は、その逃れ方を知ってるくせに、
動けないでいる...
「...俺さ、智と別れたよ..」
その言葉を聞いても、相葉さんはそんなに表情をかえなかった。そして、
「...そっか...」と一言だけ言った。
その顔を見ると、涙が溢れ落ちるところだった。
その先には、
悲しみしかないって
悔しいほどに分かっていても、
その先へ行かなければ...
俺たちは、変われない...