第10章 Tears
【雅紀side】
「…俺さ、智と別れたよ…」
ニノがポツリと溢した言葉に、俺はそっかって答えるのが精一杯だった。
その瞬間、俺の目からも涙が零れた。
たぶん、そうだろうと思ってたんだ。
この家に来て、リーダーの姿がなかったから。
ううん、電話口でニノが泣いてんのに気付いた時からわかってた。
この間話したときには、俺たちはちゃんと愛し合ってるって言ってたのに…。
でも、本当はニノもわかってたんだよね?
このまま見て見ない振りをしていても、行き着く先には何もないってこと。
ニノじゃ、ダメなんだ。
俺でも松潤でも、ダメなんだ。
あの、二人は………。
そう思ったら、なんか笑えてきた。
「…相葉さん?」
クスッと笑いを洩らした俺を、ニノが涙でぐちゃぐちゃの顔で怪訝そうに見上げてくる。
「なんかさ、腹立つよね〜あの二人。ほんとはガッツリ両思いのくせにさ、勿体ぶらせて、散々俺らのこと振り回して。…俺らのこと、傷付けて…」
言いながら、また涙が零れる。
俺はそれを袖口で拭うと、無理矢理、笑顔を貼り付けた。
「俺も、翔ちゃんと別れるっ!あんな男、こっちから振ってやるよ!」
「ちょ…なに言ってんのよ」
大声で宣言した俺の腕を、ニノが掴む。
「それって俺が可哀想だって思ったから?別に、相葉さんまでそんな事しなくても…」
「違うよ」
見つめたニノは、困ったように眉を下げてて。
だから、安心させるように微笑んだ。
「もう俺たち、とっくに限界だったんだ。俺がみっともなく縋ってただけ。でも、あんなの翔ちゃんじゃないし。あんな男と一緒にいても、幸せになんかなれないし」
今でも好き。
翔ちゃんのこと、大好き。
でも俺、自分が幸せになりたい。
それは、翔ちゃんとは無理なんだ。
「ねぇ、ニノ。今度はさ、めちゃめちゃ俺らのこと好きになってくれる人と恋愛しよ?でさ、あの二人が手離さなきゃ良かったって地団駄踏むくらい、いい男になってやろ?」
ニノは暫くの間じーっと俺の顔を見つめて。
また新たな涙を溢れさせながら、何度も頷いた。
「…ね?もう一回、抱き締めてもいい?」
小さな声で聞くと、ニノの方から背中に腕を回してくれた。
顔を埋めた肩口が、彼の涙で濡れる。
俺も、同じようにニノの肩を涙で濡らした。
もう、これで最後。
翔ちゃんのことで、涙を流すのは…………