第10章 Tears
【智side】
簡単に解しただけの孔に、かずが無理矢理大きくなったものを捩じ込んできた。
まだ受け入れる準備の整ってなかったそこから伝わる、身体を引き裂かれるような痛みが脳天を突き抜けて。
唇を噛み締め、ラグの毛を力の限り握りしめて、衝撃に耐えた。
「智…なんでだよ…」
力任せに奥へと捩じ込みながら、かずが震える声で呟く。
最奥まで辿り着いて、かずの動きが止まって。
次の瞬間、雫のようなものが頬に当たった。
目を開くと、哀しみに彩られたその瞳から、幾つもの涙が雨のように降り注いでくる。
「なんでだよ…なんで…」
壊れたレコーダーのように、同じ言葉を繰り返す彼から、逃げるように目を閉じた。
返す言葉を、俺は持っていないから。
「智っ…!」
小さく叫んで、かずが力任せにガツガツと抽挿を開始する。
俺はただ黙って揺さぶられていた。
抱き締めてあげたかったけど、俺にはそんな資格はない気がして。
涙の雨は、止むことなく降り注ぐ。
萎えていた中心を握られて、同じリズムで擦り上げられると、痛みしか感じなかった身体の奥から、じわりと快感が競り上がってくる。
そんな自分に、吐き気がした。
自分勝手で弱虫な、自分に。
かずの真っ直ぐな愛情を、利用することしか出来なかった自分に。
翔くんを失った寂しさを、かずの純粋な愛情で埋めてもらおうとした。
自分から手を伸ばすこともせずに、かずが与えてくれるものを受け取るだけで。
かずを、翔くんの代わりにしたんだ。
いつも翔くんと比べて。
翔くんの面影を重ね合わせて。
かずは、二宮和也っていう、ちゃんとした一人の人間なのに。
そんな当たり前のことすら気付かずに、自分の我が儘でかずを傷付けた。
こんな風になるまで、追い詰めてしまった。
全て、俺の責任なんだ。
「智…一緒に、イこ…?」
快楽を追っている筈なのに、苦しそうなかずの声がして。
追い込むように激しく奥を突かれて、前を擦り上げられて。
俺は呆気なく頂点へと達した。
一瞬遅れて、身体の奥にかずの熱を感じる。
身体は火照っているのに、心の芯は冷えきっていて。
涙が、一粒零れた。
かずが倒れてきて、ぎゅっと抱き締める。
俺はその髪にそっと触れながら、ずっと言えなかったその言葉を、吐き出した。
「かず…もう、終わりにしたい…」