第10章 Tears
【潤side】
「潤…もっと……もっとちょうだいよ…」
明日の仕事のことも考えて、あまり負担にならない程度にと離れようとした俺を、切ない瞳で引き留めた。
「でも、明日も仕事だし…」
「そんなの関係ない。もっと抱いて。もっと…足りないよ…」
甘えるように耳元で囁かれて。
抗えるはずもなかった。
俺の中で暴れまわる彼への愛しさに突き動かされるように、欲望のままに突き上げて。
何度も二人で昇りつめて。
翔くんは、最後に意識を飛ばしてぐったりとベッドに沈んだ。
息の上がったまま彼の中からずるりと抜け出して、何個目かもわからないゴムをゴミ箱に投げ捨てる。
さっきまであんなに淫らな姿を晒していたのとは別人みたいな、天使のように無垢な顔で眠る彼の髪をそっと撫でた。
最近、いつもこうだ。
肌を重ねる時は、狂ったように求めてくる。
意識を失うまで、何度も。
どこかうすら寒いものを感じながらも、俺はそれに逆らえない。
だって、拒めるわけない。
ずっと欲しかったものが、この手の中にあるんだ。
俺を求めてくれる。
…翔くんが、おかしくなってるのなんて、とっくにわかってる。
だって、まともだったら、俺なんて相手にしてくれないから。
だから、見てみない振りをする。
なにも聞かず、なにも気づいてない振りをすれば、欲しくてたまらなかった笑顔を俺だけに向けてくれるから…。
固く絞ったタオルで、こびりついた白い体液を拭いてやってると、彼の瞼が開いた。
「潤…」
甘えるような声で、両手を伸ばしてくる。
俺は微笑んでその隣に潜り込むと、腕を取ってぎゅっと抱き締めた。
「好きだよ、翔くん…」
囁けば、嬉しそうに顔を綻ばせて、唇にキスしてくれる。
誘うように口を少し開けば、躊躇なく舌が侵入してきて。
わざと逃げるようにした俺の舌を絡めとり、強く吸い上げてきた。
また熱が上がりかけて、慌てて身体を離す。
「潤…もっと…」
不満気に眉を寄せたその頭を、胸の中に閉じ込める。
これ以上見つめられたら、また理性がブッ飛びそうだった。
「…ね、相葉くんと別れてよ。俺と一緒に住もう?」
さっき言い損ねた言葉を、今度こそ口に乗せる。
「翔くん、相葉くんといるとき最近全然楽しそうじゃない。俺と一緒にいれば、嫌なことなんてすべて忘れさせてやるから」