第10章 Tears
【雅紀side】
「ニノは、リーダーといて幸せ?」
そう聞いたら、大きく目を見開いた。
「俺はさ…今の翔ちゃんといても、幸せじゃない…俺が好きだった翔ちゃんは、もういないんだ…」
俺の言葉を聞きながら、ニノの瞳にはみるみるうちに涙が盛り上がってきて。
今にも零れ落ちそうに、ゆらゆらと揺れている。
…ニノだって…もう、わかってるんだよね…。
「…違う…智は、違う…俺たちは、違うよ……」
呪文のように、まるで自分に暗示を掛けるように繰り返す。
「俺たちは…ちゃんと、愛し合ってる…。智は、俺のこと、好きだって、愛してるって、そう…言ってくれたんだから…」
俺だって…そう思っていたかった。
翔ちゃんは俺に、側にいてってそう言ってくれた。
ずっと側にいてって。
その言葉を、信じていたかった。
ううん、たぶんその言葉に嘘はなかったと思う。
あの瞬間、翔ちゃんは確かにそう思っていたんだと思う。
リーダーを失って…
ぽっかり空いた心の穴を、埋めてもらうために。
俺じゃなきゃ、ダメなんじゃなかった。
だから、好きだって言ってきた松潤もあっさり受け入れて…。
代わりの利く、存在。
俺も、松潤も。
翔ちゃんにとっては、誰でもよかったんだ。
リーダー以外の人なんだったら、誰でも。
「…じゃあ、なんで、リーダーはあんな風になったの?なんで、あんなに苦しそうな顔してんの?」
畳み掛けると、堪えきれなかったのか、一粒ポロリと零れ落ちて。
堰を切ったように、止めどもなく次々に大粒の涙が頬を滑り落ちていった。
それを見ていると、俺も苦しくなる。
だってさ、俺たち同じだもんね…。
自分を誤魔化してでも、離したくなかった。
壊れていくのがわかってて、それでも目を閉じて、耳を塞いで、知らないふりして側に置いておきたかった。
でもさ。
そうして辿り着いた先に、俺たちにはなにが残るの?
俺、わかっちゃったんだよ。
俺の手の中に残るのは、愛した人の形をした、只の脱け殻なんだって。
そんなもの
俺はいらない
ニノも、そうでしょ?
ニノが欲しいのは、リーダーの脱け殻じゃないでしょ?
本当に欲しいのは、愛する人の心。
だけど、それが手に入らないとわかったら……
ニノは、どうするの……?