第10章 Tears
【雅紀side】
「翔ちゃん、ごはん出来たよ!」
なんとか撮影を終えて、翔ちゃんちに帰って来た。
リーダーが伸ばした手を、咄嗟に俺とニノが阻んで。
その後の撮影の時は、二人は一回も目を合わせることはなかった。
その事実にほっと息をつきながら。
でも、頭のどっかでもう一人の俺が叫んでる。
これでいいのかって。
ニノが無理矢理リーダーのことスタジオから連れ出そうとした時、リーダーは何度も何度も振り返って翔ちゃんのことを見ようとしてた。
まるで、奪われてしまった自身の片割れを取り戻そうとするかのように。
その瞳が、余りにも切羽詰まってて。
哀しみが全身から伝わってきて。
胸が、詰まった。
このままで、いいのかな…。
俺たち、このままでいいのかな…。
翔ちゃんとリーダーを、引き離したままで、いいのかな………。
今までは、俺、自分のことだけで精一杯だった。
翔ちゃんが好きで。
翔ちゃんにも、俺を見て欲しくて。
一世一代の告白したら、付き合おうって言ってくれて。
信じられくて、嬉しくて…。
舞い上がってて…。
でも、リーダーと、前からそういう関係だって知って。
悔しかった。
リーダーに、負けたくなかった。
俺と付き合うって言ってくれたんだもん、俺の方を好きでいてくれるって、それを証明したかった。
翔ちゃんは、ちゃんと俺を選んでくれて。
全ては上手く行くと思ったのに……。
どうして、翔ちゃんは壊れていくの?
いつも魂の抜けたような顔でぼんやりするようになって。
自分の言ったことも、わからないときがあって。
自分の行動すら、わかっていなくて。
俺の言うことも、理解できないことがある。
俺が望んだのは、こんな関係だった?
今も、俺が声を掛けても、焦点の合わない目でどこか遠くを見ているみたいに、ピクリとも反応しない。
俺が望んだのは、こんな翔ちゃんだった?
俺が好きなのは、真面目で、いつも周りに気を配ってて、笑うときは大きな口開けて本当に楽しそうに笑う翔ちゃん。
目の前の、この人じゃないよ。
こんなの、翔ちゃんじゃない。
翔ちゃんがいないと生きていけない。
ニノに言った言葉は、嘘じゃない。
でも、欲しかったのは、こんな翔ちゃんじゃなくて…。
わかってる。
もう、わかってるんだ。
翔ちゃんを壊したのは
俺なんだ