第9章 消えぬ想い
【雅紀side】
翔ちゃんが、帰ってこない…。
土曜に松潤に会うって聞いて。
慌てて、とりあえず必要なものだけ持って、木曜に翔ちゃんちに押し掛けた。
翔ちゃんは微笑んで、家に入れてくれた。
…最近いつも張り付けている、笑顔の仮面をつけたみたいな顔で。
その日の夜も、次の日の夜も、激しく求められて。
翔ちゃんに抱き締められたまま、眠って。
翔ちゃん、俺といて幸せ?って聞いたら、頷いてくれて。
俺も幸せだよって言ったら、キスしてくれて。
だから、もう土曜には出掛けないと思ったのに…。
「今、どこ?夜ご飯、シチューにしたよ」
電話したら。
『あ、ごめん。今日は潤とホテル行くから、飯いらない』
って、素っ気ない返事が帰ってきて、ブツッと電話が切れた。
昨日までとの態度の違いに、なにも言わなくなった手の中のスマホを茫然と見るしかなくて…。
なんで…?
ずっと側にいてって、そう言ったじゃん。
翔ちゃんが言ったんじゃん。
だったら、なんで平気な顔で自分は違う人の所に行くの?
なんで、俺の側にいてくれないの…?
冷えきった部屋で、膝を抱えてずっと待ってたけど帰ってこなくて…。
最近の翔ちゃんのことを思い出していたら、この間の会話が甦ってきた。
『好きだって言われたら、誰とでも寝るのかよ?』
そう聞いたら。
『それのどこがいけないの?』
キョトンとした顔で。
一瞬、俺の方がおかしなこと言ってるのかなって、そう思っちゃうくらい、翔ちゃんは不思議そうな顔をしていた。
…おかしいよ。
やっぱり、翔ちゃんおかしい。
だって、付き合いだした頃はあんなじゃなかった。
ずっと、リーダーとのことを隠してて…
そう。
必死に隠してたんだ。
俺に悟られないように、みんなの前でもそんなそぶり少しも見せないで。
それは…
リーダーが、大切だったから?
リーダーとの関係を、壊したくなかったから?
それとも、俺を悲しませたくなかったから?
じゃあ、今は?
松潤とのこと、隠そうともしないで。
俺のこと、大切じゃないの?
松潤のこと、大切じゃないの?
俺が嫌な思いをするかもとか、全く気にならないの?
俺も松潤も、どうでもいいの……?
頭の奥の方で、警鐘がまた聞こえる。
それは少しずつ大きくなっていく。
聞こえない振りなんて、出来ないほどに。