第9章 消えぬ想い
【潤side】
土曜日。
ホテルで翔くんを待ちながら、あの日のことを思い出していた。
相葉くんの、憎しみに満ちた、瞳。
激しくぶつけられた、怒りの言葉。
もう20年近い付き合いなのに、あんな姿を見たのは初めてだった。
いつも、明るい笑顔で周りを明るくしてくれる人だから…。
俺だって、そんなのを見せられて、なにも思わないわけじゃない。
だけど、俺だけが悪いのかよ?
あのあと、ニノからも翔くんと会うのはやめた方がいいと諭された。
このままだと、嵐は空中分解してしまうって。
なんで?
みんななんで俺だけを責めるんだ!?
相葉くんが翔くんと付き合ってるのなんて、ただ俺より先に告白したから、それだけじゃないか。
翔くんが、俺より相葉くんの方が好きなわけじゃない。
なのに、俺だけが手を引かなきゃならないのか?
長年想い続けて、漸く振り向いてくれて。
伸ばした手を、やっと握ってくれたのに…。
この手を、離したくない。
だけど、嵐を壊すことも出来ない。
こんなことになってしまったけど、もう俺たち5人はただの仕事仲間という枠なんてとっくにはみ出していて。
友人でも家族でもない、運命共同体みたいな不思議な関係で。
壊れてしまったら、自分の存在自体が足元から崩れ去ってもおかしくないくらい、大切なものなんだ。
翔くんを取れば、嵐は壊れる。
それは嫌だ。
だけど、自分から手を離すなんて、出来ない。
どうすればいいんだよ……。
ベッドに腰掛けて頭を抱えていると、ドアをノックする音が聞こえた。
立ち上がってドアを開くと、翔くんが微笑んで立ってた。
「遅くなってごめん」
俺はその手首を掴んで部屋へ入れると、壁に彼を押し付けてその唇を奪った。
「んんっ…」
彼は抵抗することもなく、俺の唇を受け入れて。
鞄を床に落とすと、俺の背中に腕を回し、もっと密着するように引き寄せる。
「翔くん…俺、どうしたらいいのかな…?」
唇を離して、彼に問いかける。
「俺…このまま突き進んでも、いいの…?」
翔くんは、理解できないと言う風に、首を傾げて。
「早く、抱いてよ、潤…」
甘い吐息とともに吐き出された言葉が、俺の思考を奪っていく。
その妖しい光を放つ瞳の前に、今まで考えていたことなんて、全て吹き飛ばされてしまって。
俺はその手を引いて、ベッドへと向かった。