第9章 消えぬ想い
【和也side】
智と一緒にテレビ局に入って、楽屋に向かう。
今日のプラスワンは誰だろうかと、ふたりで推測する...新番組のドラマ関係か、それとも映画?後輩だったら、誰かな~...とか...
そんな楽しい空気が、楽屋の前で一変する。
中から聞こえてきたのは、温厚なはずの相葉くんと、松潤の言い争う声。そして。何かが壊れる音...
ドアの向こうは、予想をはるかに超える修羅場だった。
『翔ちゃんと相葉さんが、一緒に暮らす?』
『土曜日に、松潤と翔ちゃんが会う?』
もう、訳が分からない...
なんとか、殴り合いになるのだけは止めたけど...
3人に何が起こってるんだよ??
そして、遅れて登場した翔ちゃんの顔を見た瞬間、俺は凍り付いた。
.....翔..ちゃん..??
荒れた楽屋を見ても、顔色一つ変えず、
泣きそうな相葉くんの顔をちらっと見たのに、
なんのリアクションもなく、いつも通りに新聞を広げた。
相葉くんが出ていってしまうのと入れ替えに、マネたちが打ち合わせから帰ってきて、大騒ぎになったけど、誰も、何が起きたのか、話さなかった...
「ちょっと、机に躓いて...」
苦し紛れの俺の嘘を、怪訝そうに見ながらも、マネたちは綺麗に片づけてくれた。
......翔ちゃん...
何してんの??
「翔くん...昨日さ~、Jumpのライブでさ...」
これまた普通の顔して話しかける松潤に、笑いながら相槌を打つ翔ちゃん...
......ねえ、そこに居るのは、
ホントにあの櫻井翔なの??
「大野さん...これ..」
隣に立ち尽くしている智に、小声で話し掛けて、俺は固まった。
苦しそうに、
悲しそうに、
瞳の奥に不安をいっぱい湛えて、
智は瞬きもせずに、翔くんをじっと見ていた。
その目は、愛しいものが壊れていく様を認めたくないと、全身で叫んでいるかのようで...
放っておいたら、駆け寄ってその身体を抱き留めてしまいそうで...
俺は慌てて、智の手をぎゅっと握った。
それでも彼は、俺の方を見ない...
手を握られたことに、気付かないんだ...
「....智!!」
思わずそう呼ぶと、智はゆっくりと俺の方に顔を向けた。その瞬間...
苦しそうに歪められた目から、
大粒の涙が零れ落ちた。