第1章 うたかた
【翔side】
シャワーを済ませ、再びベッドに潜り込んだのは、もう明け方の4時近かった。
行為が終われば、俺たちは抱き合って眠るようなことはしない。
だって、恋人同士って訳じゃないから...
それでよかったのに...
セックスで与えあったその温もりだけで、幸せだった。
....なのに...
「...智くん...もう寝た?」
そっと声を掛けると、
君は閉じていた瞼を眠そうに持ち上げ、
「...寝てないよ...どうしたの?」
その笑顔に、胸がつまる...
もう一度、抱き締めたい///
朝まで腕の中に仕舞い込んで眠りたい...
こんなに近くにいるのに、智くん...
君は誰より遠い...
「手...繋いで..寝てみる?」
そんなこと言ってみたら、君は目を大きく見開いて、俺の顔をじっと見た。
どうして急にそんなこと言い出すの?
そう聞かれたら、何て答えようか..
つい出てしまった戯れ言に、何て理由を付けたらいいかと、頭の中で必死に考えていた。
でも、君は、少し笑って、
「...いいよ..」
と、布団の中で俺の右手をきゅっと握った。
その温もりに、泣きそうになる。
でも、それはグッと堪えて、俺も笑った。
「このまま、寝よっか?」
手を繋いだまま上を向いた俺に、
智くんは「うん..」とだけ小さく言って俺と同じように上を向いて目を閉じた。
繋いだ手が、
そこだけが熱をもって温かくて、
俺はほんの少し、幸せだった。
でも、その手の先にある、彼の気持ちが見えなくて、俺たちは何処へ行こうとしてるのかも分からなくて、
俺は、目を閉じてもなかなか眠れなかった。
....そして君も同じ...だよね?
眠れないの?
...何を思っているの?
カーテンの向こうが、白々夜明けを伝える頃、君の寝息が聞こえてきて、
俺も、やっと意識を手離した。
このまま、ずっとこうして手を繋いだままでいられたら。
せめて、
夢の中だけでは、当たり前に抱き合って眠れる、恋人同士でいられると、
...いい..のに...
そんなだったから、
目を覚ましたのは、俺のマネージャーが迎えに来る10分前だった。
智くんを、こっそり送らなきゃいけなかったのに/////