第9章 消えぬ想い
【雅紀side】
今日はロケが思ったよりも早く終わって。
だからたまには唐揚げでも作ろうかと、材料をスーパーで買って翔ちゃんちの鍵を開けた。
何度来ても、鍵を開ける瞬間は顔がにやけちゃう。
だってさ、俺だけだもんね。
翔ちゃんちに自由に入れるの。
リーダーは、もう来ない。
あのバスローブだって…俺の家のクローゼットの奥深くで眠ってる。
それを見る度、ちょっとだけ心が痛むけど、それに気づかない振りをするんだ。
だって、リーダーは最近、ニノと上手くいってるみたいだしね!
翔ちゃんの「うんめぇ!」って顔を想像しながら、鶏肉に醤油とお酒を揉み込んで。
サラダ作って、味噌汁作って。
鶏肉を油で揚げて。
出来上がった料理をダイニングテーブルに並べて、あとは翔ちゃんが帰ってくるのを待つだけ。
そうやって翔ちゃんのことだけ考えてる時間が、すっごく楽しいんだ。
ずっとこんな時間ばっかりだったらいいのに。
ずっと翔ちゃんのことだけ考えて、翔ちゃんの為に生きられたらいいのに…。
俺、ここに住んじゃダメかな…
リーダーがね、最近ニノんちにずっといるんだって。
殆ど同棲してるっていってもいい感じ。
ニノ、すごく幸せそうにしてる。
リーダーだって…
もう翔ちゃんのことは忘れたみたいって、ニノの嬉しそうな声聞くと、胸の奥がザワザワする。
だって、翔ちゃんは、まだ……
だから、もっと一緒にいて二人の時間を過ごしたい。
そうすればきっとリーダーのこと忘れてくれる。
俺を、選んでくれたんだから。
帰ってきたら、言ってみようかな…。
「ただいま…」
その時、玄関の開く音と、翔ちゃんの声がして。
俺は慌てて玄関まで走った。
「おかえり〜翔ちゃん。お疲れさま!」
笑顔で出迎えると、ふわっと優しい笑顔で。
「ただいま、雅紀」
あ、その笑顔、大好きだな〜♪
「今日は唐揚げにしたよ♪」
「マジで?旨そう」
「自信作だよ!早く食べよ?」
鞄を受け取ろうと手を伸ばした。
だけど、逆に彼に手首を捕まれて。
壁に身体を押し付けられると強引にキスされた。
「んんっ…!」
びっくりして、思わず両手でその身体を押し返す。
「な、なに!?急に…」
「なにって、そのつもりで来たんだろ?」
そこにいるのは…
酷く暗い瞳の、翔ちゃんの顔をした
俺の知らない人だった。