第9章 消えぬ想い
【翔side】
『今夜行ってもいいよね?』
雅紀からLINEが入った。
『いいよ、家で待ってて』
即レスしたら、飛び跳ねる子豚のスタンプが来たから、思わず顔がほころぶ。
すると、隣から潤が携帯を覗き込んできた。
「相葉くん?」
「うん...今日来たいって..」
「...ふ~ん」
雅紀に送るスタンプを選んでいると、不意に潤が俺の顎に手をかけて唇を重ねた。
「ちょっ///...んっ...」
激しく啄むから、次を誘うように口を薄く開けたら、そのまま離れていった。
そうだ...ここ、控室だもんね...
いつ誰が来てもおかしくないし...
潤の目をじっと見つめると、
「そんなもの欲しそうな顔で相葉くんとこやったら、直ぐに食われちゃいそうだな...」
そう笑った。
だから、俺もつられて笑った。
......その笑顔に、意味なんかない。
そんな顔を作るのにも、だんだん慣れてきた。
『櫻井さ~ん、松本さ~ん、次の撮影お願いしま〜す』
スタッフが俺たちを呼びに来た。
「「はあ~い」」
並んだパイプ椅子から同時に立ち上がると、
潤が耳元で囁いた。
「土曜日、たまにはホテル取るから行こうよ」
「うん、いいよ..」
俺たちは、そのまま、セットの中に入っていった。
どんなに悲しいことがあっても、
俺たちは同じグループのメンバーで。
顔を見るのが辛くても、
肩を組み合って、カメラに向かって笑わなきゃいけない。
だから、心が壊れないように、
目を閉じて、大丈夫な自分を演じる...
傷付き過ぎて、ボロボロの心を抱えて。
そんな時...
差し出された手を取ってしまうことは、そんなにいけないことじゃない...そうでしょ?
必要とされることが、
好きだって...愛してるって...
そう言って貰えれば、心のざわざわが落ち着くんだ。
耳の奥で鳴る不快なあの音が、小さくなるんだ...
肌を重ねれば、
俺はまだ必要な人間なんだって...
そう錯覚することも出来る...
だから。
雅紀でも、潤でも、誰でもいいんだ...
俺の心と身体が凍えてしまわないように。
温めて欲しい...
その瞬間だけは、全てのことを、忘れられる...
消したいのに消せない気持ちを...
「おかえり...翔ちゃん」
ドアを開けると雅紀が笑った。