第8章 モノクロ
【和也side】
全く、何やってんだよ....そう言ってみたけど、相葉さんの気持ちも、分かる。
何しろさ、恐らく智はあの部屋で、
翔ちゃんと月曜日に会ってた。
そこで、ZEROが終わって翔ちゃんが帰ってくるのを、じっと待ってたんだ...何年も...
あの少し草臥れた青いバスローブを着て。
そんな部屋で、翔ちゃんといるのは、
正直いろいろ辛いだろうな、って思う。
考えないようにしてても、今回みたいに明らかな痕跡見つけちゃったりすると、
やっぱ、堪んないよな〜、相葉さん...
楽屋に戻ると、智が待っていた。
「どこ行ってたの?」
「いや、トッ、トイレだよ」
「ふぅ〜ん...」
真っ直ぐに俺を見てる智の目に、何だかドギマギしちゃって、俺は慌てて目を反らし、帰る用意をした。
「今日帰り、何か食ってく?」
話題を変えるつもりでそう言った俺に、
「うん...今日はそのまま帰りたい..」
って。
もう楽屋には俺たちしかいなかった。
マネージャーも俺が車で来てんの知ってるから、さっさと帰っちゃったし。
帰ろうとドアに向かって行き、その前で振り返って智を見た。
「なに?」
少し小首を傾げた顔が、堪らなくて、
ドアが開かないように、そこに寄りかかり、智の腕を引き寄せて、強引に唇を奪った。
「ちょっ////」
始めは驚いて抵抗した智も、
俺が、彼の舌を捕まえて絡める頃には、脱力して、されるがままになっている。
さっきまで、大勢の人で賑やかだった楽屋。
いつも通りに、翔ちゃんが新聞を広げてたその空間で、俺は智と、貪るように激しく唇を重ねた。
見えない敵に.....
智の後ろにいつもいる、あの人の幻に....
挑戦するつもりで、智を強く抱き締めた。
「..っん..ぁ..んふっ...かず..」
「智...愛してるよ...どこにもやらない...」
「..かず...誰か...来ちゃう..から...」
俺の腕から逃げようとするから、俺は思わずその唇に噛みついた。
「っ////...ん...」
智の口から、鉄の味がした。
慌てて離すと、下唇から、じんわりと血が滲んでいた。
「...ごめ...」
何てこと...俺....
その時、楽屋のドアから静かに離れた人がいたこと、俺たちは気づかなかった。