第8章 モノクロ
【雅紀side】
「ちょっと、なんだよっ!」
収録が終わって、帰ろうとしてたニノを捕まえて。
無理矢理、空いてる楽屋に連れ込んだ。
「俺、急いでんだけど!さと…大野さん待ってるし!」
「ちょっとだけだから!俺たち同志じゃん!」
必死に訴えると、仕方なさそうにため息を吐いて。
「で?なによ?」
顎をくいっと出して、促されて。
俺は、鞄の中に入れっぱなしだったそれを取り出した。
「…なに、それ?」
ニノが、手に取って広げる。
青い、バスローブ。
「…翔ちゃんの部屋に、あった…」
ぽそりと言うと、ニノの目が大きく見開かれる。
「…大野さん、の…?」
「…たぶん…」
「なんで、相葉さんが持ってんの…?」
「……こっそり…持って、来ちゃった…」
「はあぁ!?」
珍しく大きな声を出して。
「なにやってんだよ!」
怒られた。
「だって、だって、仕方ないじゃん!そんなつもり、なかったけど、手が勝手に…」
勝手に…動くわけなんかないよ。
リーダーの物だってわかって、あの部屋に置いときたくなかったんだ。
だって…あのクローゼットを開ける度、リーダーのこと思い出すでしょ…?
「…で?どうすんの、それ」
「どうしよう〜ニノ〜」
「どうしようって言われても…」
腕組みして、ニノがこれ見よがしにでっかいため息を吐く。
「翔ちゃんは?気づいてないの?」
「うん…たぶん…」
「でもさ、いつか気付くでしょ?そしたら、犯人もすぐバレるよ?」
「うん…」
「だったら、気付かないうちにさっさと戻した方がいいよ」
「…やだ」
「相葉さん!」
「やだよ!あの部屋に、リーダーの物なんて置いときたくない!そしたら翔ちゃん、いつまでもリーダーのこと忘れないじゃん!ニノは?もし、リーダーが翔ちゃんの物、ずっと大事に隠してたら、それでもいいよって言えんの!?」
叫ぶように言うと、ニノはぐっと言葉に詰まった。
「俺はやだよ!早く忘れてほしい!俺のことだけ見て欲しい!リーダーの物なんて、髪の毛一本も置いときたくないんだよ!」
「…だったら、隠し通すしかないよ」
滅多に聞かない低い声で、ニノが言った。
「翔ちゃんに聞かれても、知らない、で通すしかない。そのバスローブは、さっさと処分して。いいな?」
ニノの瞳は、すごく真剣で。
俺はそれを胸に抱えたまま、小さく頷いた。