第8章 モノクロ
【和也side】
今日は火曜日。
夕べは智と一緒に過ごした。
....そう。月曜の夜を過ごすのは初めてのこと。
智に抱かれながら、俺は翔ちゃんに勝ったんだ、ってそう思っていた。
智が俺を抱きながら、翔ちゃんのことを思い出さないように、最中もずっと、
『好きだよ...愛してるよ...』って、そう繰り返してた。
智の口から、初めて『好きだっ』て...
そう言ってもらって、思わず涙がこぼれた。
彼の腕に抱き締められて、俺は本当に幸せだって、そう思っていた。
砂の上に築いた城だって、分かっていたよ?
分かっていたけど...俺はそれを守っていこうって、そう思っているんだ。
......それなのに。
次のゲームへのセットチェンジの間、スタッフさんと打ち合わせしている松潤と翔ちゃん...
それを、ぼんやりと見つめている、相葉くんと...
智...
そんな目で翔ちゃんを見てんなよ///
俺のこと見ろよ///
俺がこんなにあんたのこと見てるのにいい加減気づけよ...
智が、瞬きもしないで翔ちゃんを見つめてるのが許せなくて、思わず声を掛けた。
「大野さん!」
「...何?」
普通の顔して、焦りもしないで、
智は目線を翔ちゃんから俺に移して、悪びれもしないで俺の顔を見つめた。
......この人、自分が今、誰を見てたかなんて分かっちゃいないんだ...
「何...見てたの...?」
彼がなんて答えるのか怖いくせに、俺はそう聞いて見たくて、ドキドキするのを隠して、敢て聞いてみた。すると...
自分が見ていた方に視線を戻して、
「何も見てないよ...ぼんやりしてただけ...」
って...そう言った。
......その言い方は決して、焦ってる訳じゃなく、誤魔化してるんでもなく...
本当に、智は無の状態の自分が、脇目も振らずに、何を見ていたのか分かんないんだ...
無意識なんだ...
無意識の中で、智が...
智の目が追ってしまうのは、あの人なんだ...
「また、ぼんやりしてたのかよ...」
そう言って笑ってみせたけど、俺は心臓が、何かに捕まれた様にぎゅうっと苦しかった。
智が見ていた翔ちゃんは、病み上がりのせいもあるのか、カメラが回っていないときは、何となく儚げで...疲れた顔をしていた。