第8章 モノクロ
【智side】
両脚を抱え上げて、入口に先っぽを押し当てた。
「入れる、よ?」
確認するように訊ねると、小さく頷いて目を閉じ、シーツを握る手に力を籠める。
その身体は小刻みに震えてて。
翔くんも、最初はこうだったな…
大丈夫、なんて強気な声で言いながら、不安そうな瞳で俺の腕を掴んできた。
ねぇ、なんであんなこと言ったの?
男同士のセックス、試してみない?なんて…
本当は、俺のこと、どう思ってたの…?
もう、聞けない。
「…さ、とし…?」
動きを止めた俺に、かずが不安そうな目を向ける。
バカ…今、目の前にいるのは、かずだろ…。
「和也…目、開けててよ。俺を、見てて…」
じゃないと、俺の意識は翔くんの所へ飛んでってしまうから…。
かずが頷いて、俺の腕をぎゅっと掴む。
見つめあったまま、先をぐっと中へ押し込むと、かずが悲鳴じみた声を上げて、掴んでた指に力が入った。
初めて受け入れるそこは、狭くて固くて。
先へ進もうと思っても、拒むように進ませてくれない。
「かず…力、抜いて…?」
「わ、かんないよっ…!」
翔くんは…最初から、俺を受け入れるように絡み付いてきて…
俺は、萎えてしまってるかずのものを握って、ゆっくりと扱いた。
そっちに気をとられたのか、少し緩んで。
それを逃さずに、中へと押し進む。
かずの中は、痛いくらいに俺を締め付けてきて。
固く閉じられた目尻からは、いくつも涙が零れ落ちて。
『…智、くん…』
最後の夜の、翔くんの泣き顔が、重なって見えた。
「…好きだよ…」
俺は、かずにキスを落としながら最奥を目指す。
…好きだよ…ずっと、好きだったよ…
誰よりも、愛してたよ…
ゆっくり時間をかけて、漸く全てをかずの中に収めて。
強く、抱き締めた。
「ごめん、ね…」
「なんで、かずが謝んだよ…」
「だっ、て、辛いでしょ…?」
辛いのは自分の方なのに、涙で濡れた瞳で心配そうに俺のこと見てきて。
それが、初めての時の翔くんの瞳と同じで…。
ああ…俺、本当のバカだ…
愛されてた…
翔くんは、最初から俺のこと、愛してくれてたんだ…
そんなことに、今ごろ気付くなんて………
「…好きだよ…ずっと、俺の側にいてよ…」
俺は、何度もその唇にキスをした。
今腕の中にいるのが誰なのか…
わからないままに…