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スパイラル 〜螺旋の先〜【気象系BL】

第8章 モノクロ


【雅紀side】

翔ちゃんが退院するときに、合鍵をくれて。
すんごく、嬉しかった。
マジで漫画みたいに飛び上がっちゃったもん。

でも、それを見てる翔ちゃんは、どこか寂しそうな顔してて。
気づかないふりして、わざとはしゃいで見せた。

今も、そう。
一緒に水炊きをつつきながら、俺の話に相槌打って、時々は笑って。
でも、ふとした瞬間に、部屋のどこかを見つめながらすごく寂しそうな顔するんだ。

もしかして、リーダーのこと思い出してるのかな…。

二人がいつからそういう関係だったのか、俺は知らない。
ニノが言うには、はっきりとはわからないけど、きっと相当前からだろうってことだった。
それこそ、何年も。
ずっと二人で、この部屋で。
だからきっとこの部屋のありとあらゆる所に、リーダーの影があるはずで。
それを思い出してるのかもしれない。

仕方ない。

その呪文を、何度も繰り返す。
今はまだ、仕方がない。
別れたばっかりなんだもん。
きっと、そのうち俺だけを見てくれるはずだ。
だから、リーダーとのことはなにも聞かない。
聞いたって、嫌な思いするだけだし…。
俺、リーダーのことも好きだもん。
大事な仲間をそんな目で見るのは嫌だ。
だから、過去なんて聞きたくもない。
今、俺を見ててくれれば、それでいいんだから…。

「片付けやっとくから、お風呂入ってきちゃえば〜?」

食べ終わって、食器をキッチンに持ってきてくれた翔ちゃんに言うと、「そっか、悪いな」って微笑んで、そのままバスルームへと向かった。

俺は鼻唄でOneLoveなんか歌いながら、食器を洗った。

洗いながら、さっきの翔ちゃんの姿を思い出してて。

あれ?翔ちゃん、着替え持ってかなかったような…。
仕方ないなぁ、持ってってやるか。

なんかちょっと奥さんになった気分で水を止め、寝室に向かった。

クローゼットを漁って、でも結局わかんなくて扉を閉めようとした時に、不意に目に飛び込んできた。

青い、バスローブ。

ドキッと、した。

翔ちゃんの、だよね?
そうだよね?

そう思うのに、俺の手は勝手にそれに伸びて。

ハンガーから外すと、小さく丸めて自分の鞄に無理矢理押し込む。

何してんだ、俺!
なんで、こんなこと……。

「雅紀?何してんの?」

バックを胸に抱え込んで蹲る俺に、翔ちゃんが声を掛けた。


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