第8章 モノクロ
【翔side】
思ったよりも早く退院できた俺は、家に戻って2日間の休養が言い渡されていた。
もうすっかり元気になったし、仕事も休んでしまったから、早く復帰したんだけど。
ソファーで毛布を掛けてテレビを見ていると、部屋の鍵の開く音がして、
「ただいま〜♪翔ちゃん、今すぐご飯作るね!」
と、相葉くんが買い物袋とともに帰ってきた。
「ただいま、ってさ...雅紀の家じゃ、ないんだから...」
そう言うと、
「まあまあ、硬いこと言わないで!...翔ちゃん、今日はね、水炊きにするよ、待っててね(^^♪」
俺は退院の時も来てくれた相葉くんに、合鍵を渡した。
相葉くんは躍り上がって喜んだ。
......もう、智くんが来ることもないし、こんな風に相葉くんが急に訪ねて来ても、困ることもないから...
俺はもう、
相葉くんと向き合うんだって、そう決めたんだから...
「翔ちゃん!元気ないね~?まだ身体、だるいの~?」
ぼんやりしている俺を気遣って、声を掛けてくれる雅紀。おそらく、この明るさはわざとだ。
雅紀だってきっと傷付いてる...
俺と智くんとのこと、隠していたこと...
本当は責めたいんだろうけど。
彼は何も言わない...
それが逆に、俺には苦しいんだ...
寧ろ、「どうして黙ってたんだ」って罵ってくれた方が、どれだけ楽になれたか...
何も聞かず、責めることもせず、
俺を側で支えていこうとしてる雅紀を見ているのは、今はまだ辛かった。
でも、そのうち...雅紀の明るさが、笑顔が、
俺のこと救ってくれる...
いつか...きっと...
「翔ちゃ~ん♪できたよ~!」
「お~、美味そう...」
「ふふっ、しめは、雑炊ね🎵」
雅紀は食べている間、今日のロケの話や、長芋の新しい料理法教わったから、今度作る、とか...
賑やかに話してくれた。
そんな話に、時々笑ってる自分がいて...
ああ、俺ちゃんと笑えてるんだ...って、少しほっとした。
もう、
智くんのことは忘れるんだ...
何年も一緒に居たから、離れることがリアルじゃなくて、もしかしたら、また月曜には普通の顔して待ってるんじゃないか...なんて..
そんなの、幻でだってあり得ないのに...
ときどき黙り込む俺のこと、雅紀は悲しげな眼で見ていた。