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スパイラル 〜螺旋の先〜【気象系BL】

第7章 maboroshi


【翔side】

窓から、見える空が少しずつオレンジ色に染まってくる。

『ああ、もう直ぐ夕方なんだな』と思う。

こんな風に、空の色や、流れる雲を見て一日の終わりを感じるような、そんな時間...もうずっと忘れてた。

忙しい毎日の中で。移動中も閉ざされた黒い窓と、カーテンで世間から遮断して...


相葉くんがいつも、空いてる時間にはいてくれて、何かと世話を焼いたりしてくれてたから、有難いな、と思う反面、一人になったら、少しほっとした。

そこへ、『コンコン...』誰か来た...

「は~い」

返事をしても、誰も入ってこない...
誰だろう?

すると、おずおずと顔を出したのは、

「潤!!」

「...翔くん...」

入り口で立ち止まったままの潤に、

「そんなとこ突っ立ってないで、こっちに来いよ」
と言うと、のそのそと俺の側に来た。

「来てくれたんだ」
俺は素直に見舞いに来てくれたことが嬉しかったから、そう言って笑ったんだけど、

潤は、何だか泣きそうな顔をして、

「翔くん...この間は、ごめん...」

と目を伏せた。

「もういいよ...忘れる...」


.....忘れる...改めて言葉に出すと、
胸がグッと苦しくなる。

「休んで、迷惑かけちゃったね」というと、

「迷惑なんて!!...翔くんを追い込んだのは、俺のせいだから...」


潤...

あんな攻撃的な目をして酷いことをする彼と、今俺の前で肩を落としている潤が、同一人物なんて思えないよ...

謝らなくてもいい...

もう、怒っちゃいない...

元々、間違っていたのは俺の方なんだから。

潤にあんなことされるまで、気付かない俺がバカだったんだ...

もっと早く、終わりにすべきだったのに...


「...翔くん...俺は...」


泣きそうな顔した潤が、何だか遠くに見えた。



「潤...俺はもう、智くんとは会わないから」

そう言い切った俺のこと、潤はじっと見ていた。

「だから、潤はもう、気にしなくてもいいよ...潤のせいじゃない..潤が来なくても、俺たちはあの日、終わってた...」


俺の言葉に、潤は決心したような目をして言った。


「俺、翔くんが好きだよ...
それだけ...今日は伝えに来たんだ...」

潤は、それだけ言って帰って行った。




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