第7章 maboroshi
【雅紀side】
ひどい顔色だった。
肌はくすんでて、唇は血の気がなく白くなってて…。
笑顔で会いに行こうって何度も自分に言い聞かせたのに、翔ちゃんの顔を見た途端、張り付けた笑顔が剥がれ落ちた。
それでもなんとか笑顔を保とうとしたんだけど、俺の様子からなにかを察したのか、彼の表情が強張って。
誤魔化せなかった。
元々、お芝居とか得意じゃないし…。
気がついたら、涙が零れ落ちてて。
思わず、彼の身体を抱きしめてしまった。
彼の身体は、火傷しそうなくらい熱くて。
まだ、熱は下がってはいないようだった。
昨日、なにがあったのかを訊ねても、答えようとはしない。
「松潤とリーダーが、ここに来たんでしょ?」
そう訊ねると、びくんと身体を硬直させた。
返事はしなかったけど、肯定してるのと同じだ。
「…なにがあったの?3人で、なんの話をしたの?」
「……別に、なにも……」
声は、震えていた。
思わず身体を離して、真っ正面からその瞳を見つめる。
「これ以上、俺に嘘をつかないで!知ってるよ!翔ちゃんとリーダーが、ずっと月曜に二人で会ってたこと!」
叫んだら、その大きな瞳が更に大きく見開かれて。
その顔が、くしゃりと辛そうに歪んだ。
「……ごめん、雅紀……」
絞り出すように、小さな声で言った。
「なんで?いつから?俺と付き合う前からだよね?だったら、なんで俺にOKしたの?雅紀だけだって、あの言葉は嘘だったの!?」
こんな風に問い詰めるつもりなんてなかった。
だけど、翔ちゃんの辛そうな顔見てたら、自分を止められなくて。
なんでそんな顔するの?
誰のために?
俺?それとも、リーダー?
翔ちゃんは誰に謝ってんの!?
「…もう、終わったんだ…」
掠れた声で、ぽつりと言葉を落とした。
見たこともないような、苦渋に満ちた、顔で。
「智くんとは…昨日が、最後。もう、二人では会わない。ここに来ることも、ない。ごめんな、雅紀。ほんとに、ごめ…」
言葉の途中で、ぐらっと身体が揺れて傾いて。
俺の方に、倒れてきた。
「翔ちゃんっ!!」
咄嗟に抱き留めたその身体は、やっぱりスゴく熱くて。
きつく眉を寄せて、見てるこっちが苦しくなるほどに辛そうで……。
「翔、ちゃん……」
俺は気を失った彼を抱きしめたまま、声をあげて泣いた。