第7章 maboroshi
【 翔side】
....頭が重い...
身体中が痛い...
熱は、朝よりは下がってるのかな..
全身を包む倦怠感に顔を歪めながら、身体を起こした。
いったい、今は何時なんだろう?
重い瞼を上げて、辺りを見回しても、今が午前なのか、夜なのか、全く分からなくて....
俺はもう一度目を閉じた。
....仕事を...休んでしまった。
こんな風に休んだのは始めてだった。
夜、マネージャーが来てくれるって言ってたけど、今が夜なのかどうかも、分からなくて....
そこへ来客を告げるインターフォンが鳴った。
マネが来たんだと思ってロックを解除すると、程なくして玄関のチャイムが....
俺は、重い身体を引き摺るようにしながら、ドアを開けた。
「こんばんは。翔ちゃん..」
そこには、引きつった笑顔の雅紀がいた。
「雅紀...なんで..」
コンビニの袋を下げた彼は、固まる俺の横をすり抜けて、キッチンに入っていく。
仕方なくその後ろに着いていく俺に、振り返った彼は、
「何で、ってさ。恋人が風邪引いたんだよ?来るの当たり前じゃん!」
って.....
言ってることとは裏腹に、雅紀の顔には悲壮感が漂っていて....俺は、直感で、彼は、何かを知ってしまったのかも...と思った。
「お粥作るよ!卵入れて...後はフルーツ買ってきた!翔ちゃんの好きなパイナップルとイチゴだよ...ビタミンC摂ってさ!早く、よくなってよね〜!...俺さ、翔ちゃん居ないと淋しいし....」
そこまで一気にしゃべったと思ったら、
急に押し黙って俯いた....
「雅紀...」
下を向いて、肩を震わせてる彼...
泣いてるの?
俺は、その肩を抱き締めてやる術もないままに、彼を見つめているしかなかった。
すると、徐に、泣きながら、雅紀は俺を抱き締めた。
「..翔ちゃん...好きだよ..誰よりも...
何があっても、その気持ちは変わらない..絶対に!....だから...話して..夕べ..ここで..何があったのか..」
「...何がって..別に..」
白を切ろうとした俺に、
「松潤とリーダーが、ここに来たんでしょ?」
と言った。
その声に、強い意思を感じた俺は、
言葉を無くして固まった。
.....雅紀...どうして...?