第7章 maboroshi
【和也side】
相葉くんのマンションに着いた。
彼と会って、何を話すのか?
相談して、確認してどうするのか?
何も考えちゃあいなかった。
ただもう、頭の中に浮かんだ疑念やモヤモヤした思いを、クリアにしたかったんだ。
ここまで来たら、目を反らして、知らない振りして過ごすなんてできない...
俺たちの中の、淀んでしまっている空気を、一回浄化しないと...俺たちはもう、嵐でいられなくなる...
それが例え、5人がどんなに傷付くことだったとしても。
このままじゃいけないんだ...
チャイムを押すと、何の応答もなかったけど、ロックが解除され、俺はエレベーターに飛び乗った。
相葉くんの部屋の前まで行き、深呼吸をしてもう一度チャイムを押そうとすると、それより一瞬早く、ドアが開き、相葉くんが顔を出した。
その顔は、これから死刑台に行く死刑囚のようだった。
「どうぞ」
「...お邪魔します...」
俺たちは黙ったまま、リビングに入った。
相葉くんが何も言わないから、俺の方から切り出した。
「翔ちゃんとこ、これから行くの?」
「...分かんない...行きたいとは思ってるけど...」
そう言って顔を曇らせる相葉くんに、
「夕べ、おそらく翔ちゃんのマンションに、松潤と、大野さんが行った」
「....大野さん..って、リーダーはニノと、付き合ってるんじゃ...」
彼の目は、もう泣きそうで。
きっと、もう相葉くんも、翔ちゃんと大野さんのことに気付いてるんだ。
「...俺よりずっと前から、ふたりはこっそり会ってたんだ...多分...月曜日だけに」
「月曜日...だけ...」
それっきり、黙ってしまって、しきりに頭の中で、今までのことを思い返しているような相葉くんに、
「...どうしたい??翔ちゃんと別れるの?」
そう言った。すると彼は、弾かれたように顔を上げ、
「それはヤダよ!だってさ...翔ちゃん、俺と付き合うって...俺だけだって...そう言ってくれたんだ...
俺は...その言葉が嘘だったなんて、思いたくない...」
俺のことをじっと見て、はっきりと言い切ったその瞳に、強い決意の色を見た俺は、
「じゃあ、話は決まった。俺は大野さんと、相葉くんは翔ちゃんと、それぞれ別れない!
いいよね?」