第7章 maboroshi
【和也side】
相葉くんも、やっぱり何も知らなかった。
大野さんと翔ちゃんの関係...
おそらく、彼等がずっと前から逢瀬を重ね、大切に秘密裏に紡いできた二人の歴史...
隠され続けた事実に、松潤は何かの拍子に気付いてしまったんだろう...
そして、ふたりの間に割って入ろうとした?
...理由は一つだ。
翔ちゃんのことが、好きだったから...
それは、何となく、『そうなのかもしれない』と思うこともあった。距離の取り方が、不自然すぎるって言うか、他のメンバーとは、明らかに違っていて。
敢て、翔ちゃんに近付かないようにしてるのは、松潤の気持ちがそこへ向かってしまうのを拒絶しているかのようで...
俺は、下手な小細工したり、相葉さんを刺客として送り込んだりして、なんとか大野さんを手に入れようってした。
現に、手に入った...
でもそれは、見せかけだけの...身体だけの...
嘘の上に築き上げた居城...
彼の心はいつも、別のところにあったんだ...
それを分かっていながら、どうすることも出来なくて...
翔ちゃんと大野さんが、魂で繋がり続けるのを、ただ黙って見てるしかなかった...
そこへ、一石を投じたのは、松潤...
...彼が二人に何をしたって言うんだ??
電話の向こうで、絶句して言葉をなくした相葉さん...何か、気付いたんだ///
始めて気付いたの??大野さんと翔ちゃんのこと...
可哀想だけどさ。
避けては通れないんだよ。
だって俺たちは、嵐のメンバー...
逃げることも、離れることも出来ない...
皮肉な運命の糸に、絡まりながら、縺れながら、
共に落ちていくしかない...
こうなったら、行くところまで行って、地獄を見ようか?
「相葉さん、今から会える?...そっち行くから」
みんなで落ちて行こうって、そう決めたら、寧ろ心はすっきりした。
翔ちゃんと大野さんの関係にやきもち妬いて、モヤモヤしてたけど、もう、失うものなんかない...
『翔ちゃん...熱で寝込むほど、苦しいことがあったの?でもね...俺も欲しいんだ...大野さんのこと...』
俺は車の鍵を握りしめて玄関を出た。
溺れるって分かっているのに、荒波に漕ぎ出していく、小さなボートの気分だった...