第1章 うたかた
【智side】
「ダメっ………翔くんっ…あぁっ………」
翔くんの長い指が、執拗にいいとこを擦ったり押したりする。
その度に俺は、はしたなく女みたいな嬌声を上げるしかなくて。
「智くんの声、かわいい」
耳元で、翔くんの艶を帯びた、いつもより低い声がする。
背中に電流が走ったみたいになって。
思わずぶるりと身震いした。
一度過ぎ去ったはずの波が、また遠くから押し寄せてくる。
俺ばっかり昇らされていくのが嫌で、彼の指から逃れようと身を捩るけど、ガッチリと腰を捕らえられていて、叶わない。
「だめ…逃さないって言ったろ?」
耳元で響く、大好きな、君の声。
もっと、聞きたい。
ずっと、聞いていたい。
どうしたら、俺だけに囁いてくれるの…?
「…っ……翔くん、もう…欲しいの……翔くんのが、欲しい……」
つい、余計なことを言いそうになって、俺は慌てて違う言葉を口にした。
だめだ…
考えちゃ、だめ……。
もっと、快楽の海に溺れなきゃ…。
…本当の心を、さらけ出してしまう前に。
「まだ、ダメ」
なのに、クスッと笑って俺の願いを却下する。
「いやっ……な、んで……?」
「もっと乱れてよ?もっともっとエロい姿が見たいんだ」
言いながら、俺の右手を掴んで、自分のものを握らせて。
「自分でイッて見せたら、入れてあげるよ?」
意地悪く、囁いた。
「やっ…無理だよ、そんな…っ……!」
首を振って懇願したけど、彼の手が俺の右手ごと中心を包み込む。
「ほら、こんな風に…ね?」
ゆるゆると扱かれて。
後ろの孔の中のいいところも、同時に擦りあげられて。
あまりの気持ちよさに、訳がわかんなくなる。
「あっ、あっ……あぁ、きもちいいっ……!」
いつの間にか、中心を掻く翔くんの手は外されていたけど、
俺は夢中で自分のものを扱き続けた。
「あっ、やだ……んんっ……んあっ……」
「…いいよ、智くん……すっげー、エロい……」
翔くんの息遣いが、微かに荒くなってる。
あっという間にまた昇っていく。
「あっ、あっ…やだっ……イキそ…!」
「いいよ。イキなよ」
翔くんの指が、グリッと中をかき混ぜて。
「あああっ……!」
呆気なく、シーツの上に二度目の熱を、吐き出した。