第5章 俺は一般人、彼女はヒーロー
「優里…本当にありがとう」
しばらくそのままでいたが、俺は彼女をベッドに寝転がせる。
すぐに教授達が部屋に来て、死亡確認をしていた。
「来栖、最後までそばにいてくれてありがとな。おかげで笑っている」
俺が優里の顔を見ると、確かに少しだけ口角が上がっていた。
今にも起き出して俺の名前を呼んでくれそうだ。
「…なんで死ぬんだよっ!!優里っ!日本なんか、お前がいない世界なんか俺はいらないんだよっっ!」
行き場のない怒りが、涙となって俺の頬をつたってきた。
「来栖、お前寝てないんだろう?」
俺に毛布を渡してきて教授は言った。
「葬式は小規模で行う。俺ら研究員と君だけだ」
そう言い残して、優里と共に部屋を出て行った。
俺はその瞬間、何かが切れたように意識がなくなりその場で倒れるように眠ってしまった。