第12章 来客。
鶴丸『はっはっはっ!
まさか落とし穴にかかった途端
縄で拘束されて担がれてここに
連れてこられるとはな!
いやぁ、本当に驚いた!!』
『なんか本当にごめんなさい』
隣で笑いながら(泥で)ボロボロな
鶴丸様に頭を下げた。
鯰尾様と骨喰様は鶴丸様を
届けて下さるとそそくさと帰った。
怒る間もなく出ていく様は
最早、流石と言うべきだった。
鶴丸『さて、
俺と話がしたいらしいな?』
『あっ…はい、
こんなナリですみません。』
鶴丸『気にするな、それで
話とはなんだ?俺でわかる事か?』
言い難い話題だけれもきりだした。
『前審神者の事について、です。』
鶴丸『あぁ…、あいつ、か。』
少し暗くなった表情に
恨みといった念は感じない。
『貴方は前審神者について
憎悪というものは感じなかったので
話を聞いてみようと思いまして。』
鶴丸『俺はここに来て日が浅い…
他の刀剣よりはあいつの記憶も
あまり持ち合わせてないぜ。』
成程…だから、か。
淡々と話す様子に納得がいった。
『私と前審神者は…
その、似ていますか?』
それが一番不安だった事だ。
前審神者がした行為…
夜伽(よとぎ)を繰り返す刀剣達が
私の影に前審神者を忘れられない
そんな地獄を味わっているのかと
彼が私にした行為は興味であり
重ねている訳ではなかったから
鶴丸『まっっったく似ていないな。』
『そ…そうですか。』
たっぷり溜めて言い放たれた言葉に
ホッと胸をなでおろした。
鶴丸『姿形も似る影すらない
霊力に関してはわからんが
誰も重ねてる奴なんていないぜ』
鶴丸様の手が頬を撫でる。
むにむにと弄りながら微笑むので
擽ったさに照れくささに緩む頬。
『…よかった、』
鶴丸『何も心配しなくていい。』
それに…と鶴丸様は続けた。
顔が近づきドキドキしていると
鶴丸『そもそも性別が違う。』
『は……っ?』
鶴丸『似る要素を探すのが無理だ』
胸のドキドキがドッキリに変わり
ここに来ての事実に唖然とした。
(えぇ…何それ、聞いてない。)
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