第11章 風邪。
『くしゅん…っ…。』
誰も居なくなった部屋に
クシャミをすれば静かな
空気に包まれる。
薬研様と燭台切様に念を押され
へし切長谷部様には近づくなと
再度忠告されてしまった。
前審神者信者ともなれば
相当な依存を誇っているだろう。
闇落ちさせる程の力ある奴を
慕っているとなれば一筋縄では
いかないことは明白だ…。
薬研様のように一期一振様に
ヤキモチを妬いて私に薬を盛る
そんな方程式もへし切様には
通用しないだろう。
前審神者を慕えば私は邪魔だ。
しかしこのままという訳にも…。
(困ったなぁ…。)
コンコン…、
長谷部『審神者様
起きていらっしゃるでしょうか。』
………嫌な予感がする。
風邪からくる悪寒ではなく
経験をふんでからの勘だ。
寝たフリをしよう。そうしよう。
近付くなって
言われたばっかりだしね。
私は病人だから仕方ないのさ。
『は………くしゅっ。』
クシャミでバレバレだろうけど…。
私は布団へと横になり
息をいそませ立ち去るのを待った。
長谷部『失礼します。』
なぁんで!?
なんで入ってきちゃったの!?
クシャミ!?クシャミしたから!?
長谷部『………。』
ち ん も く !!!!!
私は運良く反対側を向いてるので
彼の表情も見なくて済んでるが…
沈黙が何よりも怖い。
早く帰ってくれないかなぁって
今だけでもこんのすけを抱いて
眠りについてしまいたい…。
『…へ……。』
ま、まずい…こ、れは…
『くちゅん…っ』
長谷部『起きているのでしょうか?』
私の不可思議なクシャミに
へし切様が近づいてくる音がした。
寝てます。
私は今、寝ようとしてます。
その意を込めて目を瞑り
寝たフリを続行した。
長谷部『………、』
へし切様の手が肩に触れる。
私は動くことも出来ずにいれば
へし切様の手が頬に触れ、上を
向かせるように誘導する。
こ、れは…?
長谷部『…っ…ん、』
唇に触れる柔らかいもの。
私…今…キスしてるの…?
『ん…んん…。』
離してくれない口付けに
息が苦しくなり小さく喘ぐ。
長谷部『……っ…。』
ちゅ…と音が鳴る深い口付け…
何を考えて…?
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