第11章 風邪。
『うっさい、こんのすけ…
毟(むし)るぞ、その毛っ。』
こん『いつにも増して口が悪い!』
私の言葉に全員が
凍り付いたのは言うまでもない
相変わらずのこんのすけの
ツッコミも頂いたところで、
燭台切『え…っと、
とりあえず、食事にしようか。』
燭台切様の優しい心遣いに
皆一同に頷いてくれた。
一期一振様がお辞儀をし
弟様達を連れて部屋を出れば
薬研様が残りお盆を横に置く。
薬研『食えるか、大将?』
『食べるっ』
私はお盆の上に乗った
丼の蓋を開けるとふわっと
優しい香りに包まれた。
中を見ればうどんが
美味しそうな汁の中に泳ぐ。
わくわくした様子で
食べ始めようとする私に
薬研様は少し驚いている。
燭台切『どうかしたのかい?』
薬研『あっいや…よく俺が
渡したものが食えるな…と。』
燭台切『はっ?』
薬研『大将の粥に薬を盛ったからな。』
燭台切『僕の料理にそんな事を!?』
うどんをずるずる…と啜りながら
二人のやりとりを見つめた。
お気持ちはわかりますよー
燭台切様…私もまさか料理にね…
でもうどんは食べる…美味しい…
弱った体にじんわりと染み込む
うまうま…と味わっていると
燭台切『君も君だよ!!』
『ゲホッ…。』
急な話の展開に噎せた、
ゲホゲホとしてると背中を
撫でてくれる薬研様。
燭台切『呑気に食べてる場合かい!?』
『だ、だ…って、美味しいから…。』
燭台切『そ、それはありがとう…。』
気が抜けたのかはぁ…と
項垂れて私の頭を撫でた。
燭台切『君は変わっている…。』
『…ど、どうも。』
もぐもぐと咀嚼しながら
撫で受けてのほほんと答えた。
薬研『…変な光景だな。』
でもうどん美味いよ。
その美味しさに微笑めば
薬研様は苦笑いして頭を下げた。
薬研『すまなかった…。』
私は丼を置き薬研様に手を伸ばす。
『もういいんですよ、薬研様…』
もうしないで欲しいけど
その念を込めてゆっくり撫でた。
燭台切『解決…って事かな?』
燭台切様が私と薬研様を
よしよしと撫でる…んん…。
照れくさくてへへ…と笑えば
薬研様と目が合って驚き、
共に頬を緩ませた。
今聞こえる笑い声が幸せの音…、