第8章 不安。
一期『なぜ、足…なのですか。』
我ながら何をとち狂った
発言をしているのかさえ思う。
『命令を出来なくする手段として
舌を切り落とすのもありでしょう』
一期『は、はい?』
『手は駄目です、皆さん達を
手入れする事が出来なくなります
足ならば、逃げる事ができません
舌ならば、命令される事も無い。』
私は震える体を抱きしめながら
一期一振様に向いて問うた。
『さぁ、貴方は何を望みます?』
提案しながら震えた私
切れと言うのに拒否する心。
死ぬことも傷を負うことも怖い
しかしその恐怖を彼ら刀剣達は
その身をもって経験したのだ。
理不尽にも人間と
力の在り方によって…。
一期『………。』
『…………グスッ…ヒックッ。』
ずびずび泣きじゃくる私を
一期一振様はただ見つめた。
嘘つきと思われているのだろう
当然だ、馬鹿な事を言ってると
自分でさえもわかっているから。
ギシッ…踏み込んだ
一期一振様の一歩に体が大きく
飛び跳ね一歩後ろに下がった。
怖い、こわい…コワイよ…。
一期『………はぁ、』
死ぬのは怖い…。
一期『おかしな人間ですね…。』
シュッと刀の刃が下を向く
恐る恐る視線をあげれば…
一期一振様は不信感のある
瞳で私を見下ろした。
『いち…ご、ひとふりさま…』
一期『涙は嘘をつきません。』
そっと指先が私に伸びて
目元に溜まる涙を救いとる
一期『弟達の涙を見てきた
私には…それがわかります。
何度も見てきたのですから。』
泣かせたのは貴方ではないのに
とても悲痛そうな表情だった。
『切らない…のですか…』
一期『今は、という事にします…』
スッと私の首に手をかけた。
一期『ですが、いつでも出来る
という事を…お忘れのないように』
グッ…と絞まる首筋に息が苦しい
一期『よろしくお願いしますね?』
とても低い声で私の耳元で囁いた。
この命は一期一振様に
握られているという事なのだろう。
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