第8章 不安。
手入れを出来なかった
鯰尾様と骨喰様を部屋から出し
短刀様達の傍に居てほしいと
願いを出せば二人は頷いた。
私と一期一振様と対面すれば
平気だった足が震える、
あぁ…ちゃんと私も怖いんだ。
一期『五虎退から聞きました。
手入れするとそそのかしたとか…』
『手入れするとは言いました。』
手を握りしめ喰い込む爪が
痛みを感じさせ震えを緩和させる。
一期『前の審神者もそうでした。』
ぽつりぽつりと語り出す。
一期『無理な出陣を繰り返し
傷付いた弟達を手入れしてほしいと
懇願すれば…何をしたと思いますか?』
問いかけに私が答える前に
歯を剥き出しにして吠えた。
一期『手入れと称して更なる
傷をその上から負わせたんだ!
私の目の前で!笑って
あの者は…泣いてる弟達を…!!』
『………っ、』
一期『私のせいで傷つく弟達を
私は…この手で…守れなかった。』
一言一言にこの本丸の闇が重なる。
一期『だからこそ!!
今度こそ私があの子達を守るんです』
スッ…と鞘から抜いた傷だらけの
一期一振様の本体の刃先が向けられる
一期『この手が血に染まろうと
私はもう二度と…繰り返しはしない。』
チャキ…と姿勢が正され
今にも殺される所である…私が。
意外にも冷静で落ち着いていて
ただ、足は震えていて…
なんだか…チグハグな私がいた。
『前審神者が犯した罪を
拭うことは確かに出来ません。』
一期『ならば…出て行ってください』
『ですが…、その負った傷を
なおすことが出来るのもまた
審神者なのではないですか…?』
なんて残酷な連鎖なのだろう
彼にとっては生き地獄だ…。
一期『…そうなのでしょうね。』
刀は下ろさず彼は続けた。
一期『ですが、そう簡単に
刀を下ろすわけにはいきません。』
彼は本気だ、生きる為に
そして守る為に生きている。
『そう、ですか。』
それはそうだ…彼にとっても
これは生死を伴う行いなのだから。
ならば…こちらからも
提案をさせて頂こう。
『分かりました。せめて…
切る場所を指定させて下さい。』
驚いた表情で私を見つめる
一期一振様に微笑む。
そう…私も生きる為なのです。
『切るならば…足をお願いします。』
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