第8章 不安。
手入れ部屋に行くまでに
ピリピリとした空気が漂う。
両隣にいるお二人からではない
殺気にも似た気があてられる。
三日月様の時よりも
鋭い気が襲う…あぁ…行きたくない
短刀達が集まって私を疑う
気が漂っていると思ったけれど
それは違った。
手入れ部屋に先にいた先客は
想像していた五虎退様でもなく
一期『お待ちしておりました。』
粟田口にただ一振りの太刀。
『一期一振…様…、』
一期『弟達は来ません…いえ、
来させるわけには行きません。』
兄弟セコムが現れたようだ。
またかぁ…これかぁ…
セコム怖いよどうしようかな
なんて思っていれば骨喰様が
そっと私の前に立ってくれた。
骨喰『話を、聞いてほしい。』
一期『何を話すことが
あると言うんだろうね、骨喰。』
骨喰『この審神者は
俺達の傷を手入れすると言った。』
ビリビリした空気にも負けず
骨喰様は続ける。
骨喰『信じて、みたい。』
鯰尾『そうだよ、そう!!
骨喰の言う通りだって!!
それと言ってはなんだけど
酷い事したのに刀解も傷も
命令だってされてないしさ
ましてや手入れするって!!』
お二人の必死な訴えも
一期一振様に届くのだろうか。
全く変わらない空気に
疲弊した体にはキツすぎる。
怖い…という感情が
麻痺してしまったような自分に
危機管理が鈍った気がした。
逃げ出したいのに逃げないのは
審神者だから…ただそれだけだ。
一期『今回の審神者は
口が上手いようですね、
些かお見逸れしましたよ。
二人を騙し落とすなんて。』
褒められているようで
認めてしまえば刺されそうだ。
自分を守るように縦になる
お二人の肩が震えている…。
すみません、手入れが
少し遅れてしまいそうです。
『お二人共、大丈夫ですよ。』
何がと言われればわからないけど
『あとは私が何とかします。』
ほんとは怖いくせに
逃げ出したくて仕方ないのに…
『お任せ下さい。』
助けて欲しいくせに…。
子供な自分を隠して閉じ込めて
泣きたい気持ちに蓋をして…
一期『………。』
闇にとけこむ一期一振様と対面した。
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