第27章 盲目。
『………はぁ。』
今剣様から頂いた御守りを
握り、ポケットに入れると
じんわりと温かくなった。
気のせいだろう
けど、確かに心強い味方である。
ギシッ…
『………っ。』
身構える敵に向けてではなく
迫り来る刀剣を迎える為に。
ギシッ…ギシッ…
昨日より月明かりは無く
迫ってくる陸奥守様であろう
人影に心がざわめく。
陸奥守『起きちょるか…。』
『えぇ…ハッキリと、』
襖がゆっくりと開いて
陸奥守様が優雅に立っていた。
御手杵様とは全く違う
様子にこちらの調子が崩れる。
陸奥守『入らせて貰うぞ。』
止める間もなくスッ…と
入ってきた陸奥守様はゆっくり
部屋の真ん中まで歩いてくる。
私の目の前に座れば
ふぅ…吐息を吐いて私を見た。
陸奥守『そんなに身構えんでええ
ちくと、わしと話さんか?』
『お話が通じるようで安心しました』
油断はできない…
彼の纏う霊力はクロのものだから
手が触れずとも直接会わずとも
これほどクロの霊力が刀剣達を
蝕むなんて聞いてない。
陸奥守『おんしゃの話は
皆からよーく聞いちょる。』
変な噂も、スキップジャンプ
してるんで信用無いけど…。
『貴方の負の感情が
クロ、…前審神者に利用されてます
貴方のお悩み聞かせて下さい…っ』
それしか…方法がないんですっ
陸奥守『悩み…と言う程の事は
ないんじゃがのう…ただわしの
目が見えんのがいけんのじゃ。』
目…?私はよく分からずに
首を傾げれば陸奥守様は
胡座をかいて手を膝につく。
陸奥守『見えるもんが見えん…
心で感じ取ったもんが無くなり
わしにもよくわからん状態ぜよ』
『…え、っと。』
陸奥守『今まで見えたのが
不思議だったんじゃ…。』
陸奥守様は知りたい、のか
何かを知りたくて
今もがいているのだろうか。
陸奥守『教えてくれんか?』
『陸奥守様…、』
陸奥守『心と心が触れ合えば
見えるもんが見えるようになる
そう思っちょった、けんど、
見えんもんは見えん。』
迫る…陸奥守様の手は
指先が震えていて弱々しい。
陸奥守吉行様はこんなにも
心が弱い人だったのだろうか…