第25章 対面。
後ろに長谷部を従えて
部屋へと向かい襖を開けると
黒猫と戯れるクロがいた。
『お待たせ…しました。』
クロ『ん…ありがとう。』
その表情は穏やかで
狂気を生み出した人には見えず
違和感を覚えた。
後ろにいる長谷部が息をつめる
クロの余裕の笑みは腹が立つ。
息苦しい…、ここは。
何も無い部屋なので畳の上に
お盆を置いた長谷部は私の後ろに
座ると犬のように唸っていた。
『長谷部、落ち着いて…ね?』
長谷部『はい…。』
あぁ…うん、わかってないね。
長谷部は犬のように
威嚇をし続けるので私が
彼を庇うように前に座る。
『初めまして…ですね。』
クロ『うん初めまして…
まぁ僕はいろいろ見てたけど。』
覗き魔が…そう恨みの念を
送っていればクロは話を進める。
クロ『それ、で…
僕に話があるんだろ…言えば?』
『……………イラッ。』
私は口に出して感情を示した。
クロは微笑みながら待っている。
クロ『ほら、早く。』
『…………目的はなんですか。』
私の言葉に表情変えずに答えた。
クロ『んー、暇潰しかな。』
膝の上に置いた手を握り締めた
殴りかからないだけマシである
『暇潰し…っ』
そんなくだらない理由の為に
刀剣達が傷つくなんて…
『ふざ、けるな…。』
クロ『ふざけてないよ、暇潰し
苦しむ奴見るのって楽しいよ。』
ムカムカしてきた。
何かしそうになる自分の手が怖い
後ろにいる長谷部は
耐えるように待て…の状態だ。
クロ『君は弱いと言われてるけど
強いよ?僕の強さとは違うけど、
僕は守りを捨てて攻めに行くけど
君は攻めを捨てて守りに行くから
だから優しくて弱く見えるんだよ』
見透かしたように呟くクロ。
しかし突然。
クロ『でも、僕には勝てない。』
私の首に手をかけた。
押し倒した瞬間に湯呑みは転がり
立ち上がろうとした長谷部。
長谷部『…っ!!!』
クロ『動くな、へし切長谷部。』
命令と共に私の首を締め付ける。
『ぁぐ…っ』
クロ『殺すぞ、この女。』
ぎりぎり…と締め付けてゆく
クロの手が私の気道を塞ぐ。
『っ…ぁ…。』
長谷部『主!!!』
遠のく意識の中で
長谷部の声が響き渡った