第25章 対面。
真っ黒だから前審神者を
"クロ"と呼んだら思いのほか
喜んでくれた、と思う。
先に審神者部屋へ行ってもらい
私はお茶の準備を始めると
燭台切『これなんてどうかな?』
タバスコ、ワサビ、一味唐辛子
辛いものオンパレードを渡された
『いらんっ』
私が持っていくお茶に入れたら
色でバレるだろうが。
辛いものを寄せて
お茶菓子を探していると
薬研『大将、
この薬なら色バレしないぜ。』
小さい小瓶の中に怪しげな
色をした薬を渡そうとするので
押し返して受け取らない。
『何でも薬に頼らないっ』
ったく…と肩を落とし準備を済まし
お盆に乗せて向かおうとすると、
ひょい…と誰かがお盆を取り上げた。
長谷部『主…。』
『長谷部…、』
悲痛な眼差しで見下ろされ
首を傾げて彼の服を引っ張る。
『私が、行くの。』
長谷部『俺も…連れて行ってください』
『長谷部…。』
長谷部『お願い、しますっ。』
頭を下げた長谷部に
私は困り顔して戸惑った。
頭を叩いて向かうか
頭を撫でて向かうか
どちらにしようかなと
悩んでいれば薬研様が口を開く。
薬研『大将の事
守らせてやってくれよ。』
燭台切『長谷部君は強いから
きっと頼りになるから、ね?』
行かせてあげてほしい…
そう瞳は語っているようで。
頭を下げ続ける長谷部の
頭に手を触れて整えた髪を
乱さないように撫でた。
触れた時震えた長谷部に
『私の後ろを頼みますよ。』
敵は前だけど。
長谷部『ありがとうございます!!』
叫んだ時、お盆が揺れて
お茶が零れそうになった。
行かせたく…ないな。
それが私の本音なのだけど
きっと誰も許してくれない。
カタカタ…とお盆が揺れる
長谷部の震えが振動して
湯呑みが音を立てている。
頼りないとかそんな事じゃない
怪我をして欲しくない…だから
一人で行こうとしてたのに…。
どうして一人で頑張らせて
くれないのでしょうと思った。
その代わり、彼らはなぜ
頼ってくれないんだろうと
悩むのはわかっていながら。
長谷部を後ろへと控えさせ
いざとなれば私が傷を負う。
そう心に決めて
前審神者、黒の場所へと向かった。