第25章 対面。
前審神者『来ちゃった。』
私は数分前に宗近様に
明日、前審神者と会うと言った
言ったのにこの本丸の玄関である
場所に黒い衣服で身を包み爽やか
スマイルを見せているのは誰だ。
『お引き取り下さい。』
宗近様に勇気と言う名の
温もりを貰ってぬくぬくしてたのに
黒猫が入ってきて私を見つけたから
何か訴えたいのかと思い付いてきた
こんなサプライズはいりません。
前審神者『待ちきれなくて…ね。』
世の女性の中で爽やか系が
好きな人はキュンッ…と来るだろう
だけど、死線を乗り越えてきた
私は相手の霊力に気付いてしまう。
(………強い。)
キュン…ではない全身に鳥肌が立つ
ゾワッ…とした感覚だ。
『明日って言いました。今すぐ帰れ。』
私の後ろでは事の騒ぎに気づいた
刀剣達でいっぱいになっている。
恐怖、焦燥、憎悪、嫌悪、悲痛
それぞれが思い浮かべる感情が溢れる。
へらへらと笑う前審神者に
私は真正面からぶつかるも効果無し。
太刀ほどの身長で振る舞いは
一期一振様を連想するがその
浮かべる表情はどこかあどけない。
遊びを見つけた子供のように
黒い全身に似合わない笑顔。
何を考えているのか読めない瞳。
前審神者『まぁまぁお嬢ちゃん。』
今ならコイツを殴れる気がする。
目に見える武器は所持はしていない
衣服の下に何かあれば別だけど。
今すぐに死ぬという危機は無い…
向かい合う彼に殺気はない。
前審神者『今日も明日も変わらない
さぁ、お茶にしようじゃないか。』
有無を言わせぬその発言に
私は溜息を吐いて振り向いた。
ビクッ…と反応した刀剣達に
気づき、微笑みを浮かべた。
私の表情に唖然とした皆さんを
見つめ、"だいじょうぶ"と伝えた
("何が、大丈夫?")
私が私に向けて問いかけた言葉
答えは無いけれど…。
("怖いくせに。")
うるさい。黙れ…
心の中の葛藤は続く。
震える心を殺して
私は大丈夫と思い続ける。
大丈夫…それは暗示。
保証のない心の防御。
(助けて…。)
救いの声は誰にも届かない。