第23章 自我。
宗近様の口付けに翻弄され
とろんと虚ろに彼を見つめ
三日月『さて…ここを出るか。』
どうやら私を部屋から出す為の
魂胆だったらしい…。
期待した私が馬鹿じゃないか…っ
少し不貞腐れ気味に彼を
睨みつけると可笑しそうに
宗近様は微笑んだ。
三日月『部屋から出せ…
そう短刀達から頼まれたからのう』
『なんで…ちゅー…なのですか。』
三日月『俺がしたかったからな…』
はっはっは…と笑う宗近様に
ぐりぐりと額を押し付けた。
私の恨みを届けーと擦り続けた。
すると思い出したかと言うように
口を開いた宗近様は衝撃の一言。
三日月『そう言えば
山姥切が夜を共にする番だと
先ほど決まっておったぞ。』
『はっ?』
三日月『一人で寝かせるのは
些か不安だからな、皆で決めたのだ』
『えっ、待ってください。
私の意見は…?私の意思は?』
宗近様に掴みかかって
ゆらゆら揺らしていると
まぁまぁと頭を撫でる。
いやいやいや…絆されないから、
聞き捨てならんから!!
三日月『なに、山姥切も
なかなか強い刀だからな。
心配することはなかろう。』
そ、こ、じゃ、なーい!
『宗近様…っ!そうじゃなくて!』
三日月『ほう、俺と一緒がいいか?』
『私の話を聞いて!!』
三日月『照れるな照れるな。』
もうダメだ、言っても無駄なヤツ。
私は掴んだままの手を離さず
がっくりと肩を落とせば、
宗近様は背中をポンポンと撫でる
三日月『怒るなよ…。』
『………怒りませんよ、多分。』
三日月『心配が尽きぬのだ。
皆…感謝もしておる…その分…
守りたくて仕方ないのだよ。』
そんな事…言われたら
何も言えないじゃないですか…。
『………丸め込まれた気分です。』
三日月『そうかそうか…
良いではないかたまにはな…?』
しょっちゅうですとは言わない。
私は仕方ないなぁ…と
ため息つきながら宗近様に飛びつく。
突然の事なのに難なく受け止める。
宗近様の胸に擦り寄れば
とくん…とくん…と、心地よい鼓動。
『宗近様…、』
三日月『俺の傍から消えてくれるな
勝手に死ぬことも許さんぞ…。』
優しい言葉…深まる恐怖。
毒を流し込まれ体が麻痺していく…。