第23章 自我。
三日月『刀…であるな、コレは。』
傷付けられた傷痕を見つめたまま
宗近様はヨシヨシと頭を撫でる。
軽く鼻をすすり顔を上げ
傷痕を見つめ涙声で呟いた。
『細かい傷痕がある事から…
グス…短刀か打刀、もしくは脇差
あたりだと思われます…スンッ。』
撫でる手が激しくなった気がする。
三日月『うむ…同じ意見だ。して…
どうする、何もしない…という、
訳にはいかんだろう?
不穏な影も感じられたしのう…。』
宗近様の洞察力は流石というより
お見逸れする程素晴らしいものだ。
三日月『気になってきてみれば
この有様…お主も来るとなれば…
ことを急ぐことなのだろう…。』
やめて心読まないで。
私の方が追い込まれた気分…。
『犯人…という言い方は
好きではありませんが…恐らく
私の関わりのない刀剣ですね。』
ふむ…息をつき宗近様は
私の言葉に続けて語り出す。
三日月『信じたいのだな…、』
『はい…っ…疑いたく…ありません。』
私の我儘に宗近様は責めなかった
受け入れるように頷いてくれた。
三日月『こちらからも探してみよう
他の者にも頼んでみるか…?』
『疑心暗鬼がうまれ
築いた絆を傷つけたくないです…
この事はどうか…ご内密に…。』
三日月『あい、わかった。』
宗近様はしゃがみこんでいた
私を立ち上がらせ土を払う。
三日月『さて…戻るとしよう。』
『えっ…でも、ココ…。』
木の幹を指差せば
宗近様は私を胸へと閉じ込めた。
三日月『夜は終わらんが、ここは
冷えるからのう…明日にするぞ。
なに…安心せい、お主の結界は
全部が破られた訳では無い。』
『でも…っ…。』
三日月『後に響いてしまっては
元も子もないからな…戻るぞ。』
肩をグッと掴まれて
歩き出した宗近様に押されるように
桜の木から離れていった。
止まって欲しくて立ち止まろうと
足を踏ん張るも彼の速さは変わらず
次第に抵抗するのも無駄だと気付く
宗近様はわかっている…
もし、私が疑うと宣言してしまえば
三日月『ふむ、…明日も晴れだな…。』
『そうですね…宗近様。
明日はいい天気になります…きっと。』
貴方を疑うと言うことになるのだから。
(彼は…わかっているのだ。)