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狂気の傷痕【刀剣乱舞】

第22章 仏道。


数珠丸『貴方の過去にその
秘密が隠されているのですか?』


『秘密という訳ではありません
隠すことなど何も無いだけ…。』


私が選んだ道は逃げ出した場所
それを知って欲しいと思いました。


数珠丸様は私の横に座り
語り出すのを静かに待ってくれた。


『私は…家族を知りません。』


数珠丸『………っ、』


『母を幼い頃に亡くし
父と過ごした記憶もありません。』


だからこそ審神者を知った時の
あの感動が忘れられない。


数珠丸『悲しい…過去ですね。』


『はい…、私は痛みを知っている
知っているからこそ逃げたくない

私の我儘でもあるんですよ…。』


ふわ…と、肩を抱きその手で
頭を撫でてくれた数珠丸様は


労わるように髪を撫でる。


『審神者になれずとも本丸を壊す者を
この手で壊す事が出来るならと思い…

断罪者の道を選んだのです。』


壊すのなら出来ると思ったから
力があると知った時迷いはなかった。


護るより壊す方が強くなれる
それこそが守るに繋がると思った。


数珠丸『貴方は何か得られましたか…?』


『何も無かったです…。

やり遂げた瞬間に訪れる虚しさ
空っぽのままだったんです。』


人を殺した過去は無いにしろ
何度も傷つけた過去がある。


変わらない己の罪は消えず
罪を犯した者に罰を下せば


己への罪へと重なった。


『数珠丸様…私は痛みを知り
その痛みを相手へと押し付けた
卑怯者に過ぎないのですよ。』


綺麗なものじゃない
救われた者がいようと傷は残る。


数珠丸『なぜ…そこまでして…、』


『羨ましかったんです。

私の知らない家族が
目の前に広がっていたことが。』


ぴくっ…と撫でていた手が反応する。


数珠丸『家族…。』


『許せなかった家族を壊す者が…。』


そしてまた何も得られない連鎖が続く。


選んだ道なのに報われない。
恨むべきものを見失い戸惑い



やがて…私は神の存在を否定した。



仏道を見つめてきた数珠丸様には
暴言ともなる言葉だろうけれど…。



救ってくれるなら救われたかった。


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