第22章 仏道。
数珠丸『残酷ですね…人の世は。』
ぽつり…数珠丸様の言葉がおちる。
数珠丸『変わりゆくこの世に
悲しみだけは留まり続け蝕む業…
刀である私が仏道を極めるなど
おこがましくさえ思います。』
添えられた頬にある手が
私を上へと向かせ視線を合わせた
揺らぐ瞳…その奥に溜めるもの
それは涙という雫でしょうか…。
数珠丸『この手は…もう
極めることさえ叶わない…
ならばいっそ…
全て闇に染まってしまいたい。』
ぐっ…と抑え込まれた私は
布団へと押し付けられた。
『………っぁ。』
ぎりぎりと力を込めて
抑え込まれれば痛みが肩へはしる
『数珠丸…様…。』
数珠丸『その方法がなんなのか
わからなかったのですがね…今は
気づけたような気がします。』
『離し……て、』
数珠丸『貴方を犯せば…
私は闇に染まり楽になれますか。』
そんなもの…楽とは言わない。
その細身から考えられない程
肩を押さえつけられた力は強い、
『痛…ぃ…いぁ…。』
数珠丸『この本丸に来て…目の前が
真っ暗なんですよ…見てきたものが
全て闇に染まりやがて私を蝕む。
仏道を見つめた目は何も見えず
私はもう、染まるしかないのです。』
その方法がどんな手段であるか
この状況になれば誰でもわかる。
『さぁ、その身を渡して下さい。』
近寄ってきた数珠丸様の顔に
背けずただ真っ直ぐ見つめた。
数珠丸『いい子ですね…、ん…。』
ちゅ…と重なる唇がこの状況に
似つかわしくない程…温かかった。
今彼から目を背け逃げ出せば
彼は自ら命を絶ってしまうだろう。
それ程…追い詰められていた。
道に迷いこんでしまった彼を
私は自分の過去と比べてしまう。
審神者になった事で
私は私の存在を得ることが出来た。
ならば…私が出来る事は一つだけ。
彼の想いを受け止めること…。
『ん…ぅ、数珠丸様…っ…、』
彼の名を呼べば彼の舌が入り込む
ぬるり…くちゅ…と音を立てやがて
舌を絡めとる。
本丸の闇…地獄を生きて
信じていたものを見失った。
そんな彼を誰が否定できるという。
『ふ…ぁ…ンッ』
数珠丸『フフ…楽しみはこれからですよ』
私の得たものを…貴方に届け。