第15章 嫌悪。
情事後の私とは思えない
足取りで愛染様を起こしに行く
眠りが浅いのかすぐに
蛍丸様の所へと付いてきてくれた
明石様の様子を見て目の光を宿し
期待の満ちた瞳で見つめられる。
国行『国俊…。』
愛染『いいよ、国行。なんにも
言わなくてもさ…わかってるよ。』
イイ男っぷりに私が泣きそう。
来派のお二人を連れて暗く
重い空間の審神者部屋の中へ
入ろうとすれば蛍丸様が敵意を
剥き出しにして睨みつける。
ただ、無心に敵を狩るように。
私はいつ切られても
おかしくない蛍丸様の間合いへ
迷いなく進んでく。
心が乱れたのか刀を持つ手が震える。
『蛍丸様…初めてまして、ですね。』
私が声をかけた時
愛染様とは明石様は蛍丸様の手に
そっと自分達の手を重ねて握る。
私はゆっくりと手を伸ばし
向けられた刀に触れて霊力を注ぐ
傷は治せるが心は言葉で届けましょ
『もう、いいんですよ。』
全て終わりにしましょう
前審神者に縛られるのは…。
国行『蛍丸…すまんかったなぁ
自分保護者失格やわ。』
愛染『俺も…お前の事も
国行の事も守れなくてごめん…。』
彼らは悪くないのに
家族にとっては重罪なのか
国行『主はんにお叱りもろてな
やーっとこの頭で気付けたんよ。
笑わせたかっただけなんやけどな…』
蛍丸様の頭を優しく愛しむように
国行『苦しめてただけなんやなぁ…』
守りたいのに守れない
歯がゆさは蛍丸様が一心に感じてる
愛染『俺も…全然…役に立てなくて
諦めようとしちまった…。』
震える手で蛍丸様の手を包む。
届いて…温もり知った彼の言葉を。
愛染『でも、俺やっぱり二人と
ずっと…一緒に居たいんだよ。』
溢れる涙を溜め込んで彼は叫ぶ
愛染『蛍…なぁ、帰ってきてよ。』
愛染様の頭を撫でながら
蛍丸様を抱き締めるように
引き寄せた明石様。
国行『二人が居ないとなーんも
出来んねん、帰ってきて来てや。
蛍丸…なぁ、聞いてんのやろ?』
愛染『なぁ、蛍…、』
呼びかけた声に蛍丸様の瞳は揺れる。
無き道は作り出せばいい…
そう祈りを込めて蛍丸と向き合う。
『さぁ、蛍丸様。
家族が待っておりますよ。』
どうか、帰ってきて。
届いた温もりは彼を救えるか。