第15章 嫌悪。
楽しい事…とは何か。
彼の様子からしてそれは
一目瞭然の事だった。
国行『なぁ…出来ますやろ?』
ドンッ…
明石様の腕が顔すれすれに
横切って壁を大きく叩く音。
近付いてくるお顔に
顔を逸らせず見つめたまま、
瞳の中を見ると闇を纏いて
私を映さず"何を"みてるのか
他人の私からは見えなかった。
『あか…し、さま…。』
国行『仕事以外に出来ること
ゆーたらコレしか思いつかへん』
唇が触れそうな距離で彼は呟く。
私の鼓動は高鳴る…
少しでも動けば彼は私に何をする…
国行『たーっぷり
教えてもらいますわ、主はん。』
その主の名に愛はない。
『い、やです…明石様…。』
繰り返しちゃ駄目だ
ちゃんと…言わなくちゃ…、
心の手入れはこんな形で
償えるものじゃない事を
国行『誰も答えなんか
きーてませんので…大人しく
犯されればいいんとちゃう?』
『んっ…ぅっ…ンッ』
顔の角度を変えて
眼鏡があたらないようにする
熱いキスがほろ苦い。
ちゅ…ちゅく…、吸い出すような
啄むような楽しむ口付け。
ガンッ…と両腕を壁に叩きつけ
その音でビクッと反応すれば
キスで私を支配しようとする。
『あっ…か、し…ンッ…。』
国行『なんちゅー顔してはりますの
堪らなくなってしまうわ…。』
どくん…どくん…と
聞きなれない言葉に胸が苦しい
耳が彼の声を言葉を響かせて
理解すると同時に顔に熱が帯びる
『や、めて…明石様…
こんな事しても…、蛍丸様は…ッ!』
国行『黙っててくれます?』
ガリッ…。
喉仏あたりを強く噛んだ。
彼の歯に痛みがはしり
言葉を止めればその隙とばかりに
明石様が言葉を綴る。
国行『俺がしたい事にいちいち
口出しせんといてくれます?』
『ぃ…っ…ぁ゙。』
有無を言わせないとはこの事か
愛染様の声が届かないのなら…
私の声だって届く筈もないのに
国行『さぁ、楽しみましょーや。』
意味の無い行為ほど
繰り返したがるのは…なぜ…?
何故こんなにも近いのに届かない
こんな事をしても蛍丸様は
笑ってくれないというのに…。