第15章 嫌悪。
国行『何しとう…あんた。』
『明石様…。』
ゆらりゆらり歩いているかと
思えば…違う…少しでも不審な
動きをすれば切られる間合いだ。
何を考えているか
わからない人ほど怖いものは
ないと言うのに…読めない。
彼の思考が読み取れない。
国行『誰やの、この人。』
愛染様へと向いた明石様は
どこか棘のある声で。
愛染『この本丸の新しい主さんだよ』
今となってはそんなに
新しい訳じゃないけど、まぁいいか
『初めまして…、』
国行『へぇ、そりゃどうも。』
どう見たってよろしくね
って感じではなかった。
私には興味ないですとばかりに
横を通り過ぎ審神者部屋の中へ
入っていった。
部屋の中を覗くと広い部屋の
真ん中の座敷に座り込んでいる
蛍丸様の姿があった。
遠目ではわからないけれど
どこか虚ろな様子が伺えて
それは何よりも危うかった。
動かずただじっとしていて
傍らに蛍丸様の刀も置いてある
明石様が蛍丸様の隣に座り込み
心配そうに覗き込んでいる光景
それはあまりにも痛々しい。
そのお二人を離れた所から
私の隣で見つめる愛染様。
なぜだ…なぜこんなにも
生きながらに心が死んでるの。
『愛染様…、』
隣を見つめれば愛染様は
悔しげに俯き呟き始めた。
愛染『もう…駄目なのかな俺達。』
今にも泣きそうなその声に
私はそっと頭を撫でた。
『諦めてはいけませんよ。
大丈夫です…私がいますから』
愛染『主さん…、』
『心を手入れしましょう、ね?』
愛染『よろしく…お願いします』
礼儀正しい愛染様は
深々とお辞儀をしてくれた。
うんうんいい子すぎるね
愛染様…とりあえず頭上げて
これは傍(はた)から見て
頭下げさせてる最低な私って
図だからやめて下さい。
愛染様の頭をよしよしと
撫でれば照れくさそうに微笑む
彼にこちらも嬉しくなった。
その光景を遠目から見る一人の
視線に気付けなかったけれど…。