第48章 満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー / 謙信END
「舞っ…ぁあっ…愛している、舞……」
とめどなく溢れる言葉は、夜のとばりに消えていき。
空が霞み始めても、甘美な啼き声は止みはしない。
────いや、止ませはしないだけだ
舞の身体も心も喰らい尽くして、貪って。
そして濃密な蜜時は過ぎていった。
『謙信様、ありがとうございます』
蜜時の合間合間に、そう囁く舞の言葉だけが……
かなぐり捨てた己の精神を、繋ぎ止めるかのように。
────…………
(……なんでお前がここに居る)
ああ、これは夢だ。
酷く懐かしく、困惑する夢。
『あの女』の後ろ姿を見ている。
俺達が横たわる褥の横に、無言で立っていて。
声を掛けようとしても、声が出ない。
そして──………
『あの女』は振り向きざま『ありがとう』と微笑み。
姿は光の玉となって……
隣で裸で眠る舞の下腹部へと消えていった。
『ありがとう』とはなんだ。
それを言うのは、俺の方だろう?
────…………姫。
「………………っっ!」
何かに引き寄せられるように、俺は目を覚ました。
額には汗をかき、やけに喉が乾いている。
思わず目を見開いても、見えるのは部屋の天井。
舞と泊まった、湯治場の宿の……
「舞は………居るな」
腕に抱いている、舞の存在を確かめる。
舞は布一枚まとわぬその姿で腕に抱かれ、胸元にくっついて穏やかな寝息を立てていた。
途端に漏れる、安堵の溜め息。
舞と想いが通じ、限界まで身体を重ねた事は、この気怠い身体が現実だと証明している。
───おかしな夢を見たものだ
何故……今更夢に出てきたのだろう。
何故、光となって、舞の中に消えたのだろう。
思わず、昨夜散々己の欲を吐き出した、舞の腹に触れる。
夢では、光の玉は『ここ』に消えていった。
その夢の示唆する理由が……解らない。
「ん……謙信様ぁ………?」
その時だった。
舞が可愛らしい声を上げて、伏せられた長いまつ毛を開いた。