第48章 満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー / 謙信END
「……起きたか、舞」
「はい、おはようございます……」
「だが、まだ寝ていろ。身体が辛いだろう」
まだふわふわと寝ぼけた様子の舞。
そのぺったり額についた髪を払い、口づけていると。
最初は目を細めて喜んでいたが、やがて何か不思議そうに腹を撫でた。
「……どうした?」
「謙信様、なんか不思議なんです、ここが熱いの」
「え……?」
「なんか…私、予感がします」
すると、舞はにっこりと微笑み。
鈴の転がすような、心地よい声で、こう言った。
「赤ちゃん、出来たかもしれません」
湯治場から越後へ舞を連れていく時。
神社に立ち寄り、舞の書いた絵馬を見せてもらった。
『謙信様の赤ちゃんが抱けますように』
そう可愛らしい文字で書かれた絵馬。
『願い事が叶ったかもしれない』
そう二人で顔を見合わせ、微笑みあった。
────これは、七夕が起こした奇跡なのか?
俺は、思った。
あの夢の示唆する意味を。
あの光はきっと…………
『貴方の元に生まれ変わってくる』
そう伝えたかったのではないか、と。
「謙信様、またここへ来ましょうね」
「そうだな、御礼参りに来よう」
「御礼参り?」
「願い事が叶ったんだろう?……来年は『三人』でここへ来る」
「謙信様……」
「ほら、おいで……舞」
「はいっ!」
織姫と彦星の恋物語。
七夕はきっと、奇跡も起きる。
その奇跡は、舞と居たら必然的な事だ。
愛し合い、繋がり合い、そして……
お前と描く未来を、共に瞳に映して行きたい。
お前とならばきっと、俺はもっと強くなれる。
共に歩んでいこう、どこまでも。
手を取り合い、そして──…………
いつか二人を分かつ、その日まで。
満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー
《謙信END》 終
『織姫争奪戦シリーズ』、長々御付き合いくださり
ありがとうございました!