第47章 満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー / 信長END
「舞、様子はどうだ?」
星の綺麗な夜──………
天主の欄干の笹に、七夕飾りを飾り終えた信長は、部屋にいる舞に声を掛けた。
今日は七夕。
舞と一緒に、こうして天主で七夕を祝うのは、去年から引き続き二度目だ。
舞はふふっと言って、にっこり微笑み。
そして、その愛らしい口を開き、鈴がなるような声で言う。
「はい、もうすぐですよ」
その声を聞き、思わず口元が緩む。
そのまま中へと戻り、舞の傍に腰を降ろした。
そして、そっと舞の肩を抱くと……
舞は少し怪訝な表情を浮かべる。
「信長様、今は我慢してください」
「肩を抱くくらい、問題無いだろう」
「貴方はそれくらいじゃ済まないでしょう?」
そのまま舞は、ふっと呆れたように笑って……
腹に手を当て『愛すべき者』に視線を落とした。
「しょうがないお父さんですね、まったく」
────舞が身ごもったのは、すでに十月前
舞が妊娠し、すぐに祝言を挙げ。
そして、あれよあれよという間に腹は膨らみ、今日の七夕。
今日は子が腹から出てくる予定日である。
日ごと膨らんでくる舞を愛しく思い、そして……
去年は二人だった七夕が、今年は三人である事。
それは眩暈のするほど幸せな日々の象徴だ。
あれからも戦乱の世は続き、戦も幾度となく繰り返され……
その度に、舞を残して戦地へ赴いた。
しかし──……
俺は舞の元へと、帰ってきた。
舞と温かな時間を過ごすために。
共に、幸せな未来を見るために。
舞は自分の存在だけでは足りないのか、新たに『帰ってくる理由』を作った。
そのおかげか……
舞の願った願い事は、こうして叶えられ。
そして、まるでぬるま湯のように柔らかな日々は続いている。
(ぬるま湯でも…自分が駄目になる気はしないのが疑問だが)
きっと、それは舞が思い出させた『温かな感情』のせいかもしれない。
人を愛する事、幸せを分かち合い、そして。
────命を繋いでいく事。