第47章 満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー / 信長END
「信長、様……」
その時だった。
いつも通りにふにゃふにゃ笑っていた舞が、腹を撫でて顔を歪め始めた。
「どうした、舞」
「なんか、急に痛みが、強くなってきて……」
その舞の言葉を聞き、思わず目を見開く。
きっと『その瞬間』が近づいた。
幸せの先。
舞と見た、温かな未来の。
────繋がる命の、瞬間の息吹を。
「褥まで移動するぞ、歩けるか」
「大丈夫、ですっ……」
「すぐに産婆を呼ぶ、それまで耐えろ」
「信長、様っ……!」
舞は額にうっすら汗を浮かべながら……
最高に美しい『女の顔』で言った。
「愛して、います…信長様。幸せの先を……見届けて、ください……ね?」
────この胸にひとつ、永遠を知っている。
貴様への想いだ、舞。
この乱世で、確かなものなど無いと思っていた。
気付かせた礼は、この身を賭けて返していく。
愛する舞と、それから……
これから『愛している』と伝える相手に。
「舞、俺も貴様を愛している。だから命を繋げ、傍に付いて決して離れん。その息吹を共に感じ、そして……愛していると言わせてくれ。共に、幸せの先を見届けるのだ。貴様と俺と子と三人で」
────その後、舞が小さな姫を産み落としたのは、ほんの少しだけ未来のお話。
七夕に結ばれた織姫と彦星が。
新たな命を繋いで……
そして巡る、時は駆ける。
星は廻って、運命を刻む。
信長が天下統一を果たし、大平の時代の始まりは。
次の年の、七夕だったと……
それもまた、七夕が起こした奇跡の未来のお話。
満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー
《信長END》 終