第47章 満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー / 信長END
────星は廻り、時は流れる
二つの時間として過ぎていた、己と舞の時間は。
今こうして交わり、繋がって一つの時間を刻んでいく。
そして、共に過ごす時は温かで。
遠い昔の記憶に押しやっていた、まっさらでかけがえのないものだったのだと……
忘れる前に、舞が思い出させた。
人の温かさ、そして……
誰かを愛しく想い、それを守っていくこと。
(一人の女との出逢いで、こうも変わるとはな)
しかし、それを否定したりはしない。
忘れかけていただけで、『それ』は元々自分の中に在るものだからだ。
過ぎ去った時間は、決してもう戻る事は無い。
ならば、これから過ごす時を、温かく色鮮やかに染めていけばいい。
舞と過ごすであろう時間なら、灰色で無機質な時間には絶対ならないだろうから。
「……信長様の願い事は、天下統一ですよね?」
やがて、舞が胸に顔を埋めながら、ぽつりと言った。
その背中を優しく撫でながら、少し考え……
そして、行き当たった答えを、そのまま口にする。
「……そうだな、それもある」
「それも……?」
「天下統一は成し得る野望だ、このような所に飾る綺麗な願い事とは…少し違う。貴様は短冊に、なんと書いた」
「私は……」
舞が顔を持ち上げ、その潤んだ瞳を向けてきた。
顔が微かに高揚し、赤るんだ頬が、やけに艶を感じて目を離せなくなる。
「私は、信長様と一緒に温かな時間が過ごしていけますようにと、お願いしました」
「温かな時間……?」
「はい、こうしている時間はとても温かくて、こんな時間がずっと続けばいいなって。天下統一は長く厳しい道程だと思いますが、それに疲れた信長様が私の元で…少しでも休まればいいなって」
「舞……」
「だから、貴方は決して独りではないです。これからもずっと一緒です」
舞の健気でささやかな…でも、深い深い愛情を感じて、胸が熱くなる。
きっと舞は、これからも人を殺し続ける自分を、全て受け入れ、そして……
疲れたら『おかえりなさい』と腕を広げるのだろう。
人の温もりを求めてはいけないと思っていたのに。
舞は…これほどまでに、温かい。