第45章 満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー / 光秀END
「じゃあ……せめて天の川に願ってみませんか?もう、きっと星が出ている時間でしょうし」
そう可愛くねだられては、聞かない訳にもいかない。
舞を抱えたまま、静かに移動し、外に面する障子窓を開く。
開いた障子窓から、空を伺えば──………
「わぁ……綺麗…………!!」
空を見上げ、舞が嬉しそうな声を上げる。
そこには、無数の星が、紫紺の夜空に煌々と瞬いていた。
そして空を横切る、光の帯のような星の群れ。
乳白色の微光を放ち、天の川と呼ばれる、その星達は。
普段、あまり空や風景を綺麗だと思う暇もない己でも、感嘆のため息が出るほどに美しい。
「……綺麗だな」
「光秀さんも、そう思いますか?」
「ああ、今まで星空を見上げる機会なんて、そう無かったが……お前とこうして見ると、綺麗だと感じる」
「光秀さん……」
「……ほら、俺に見惚れてないで、天の川に願ったらどうだ?」
舞が空からこちらに視線を移して、じーっと見ていたので、からかって外を見るように促す。
すると、舞は頬を染め、慌てたように『見惚れてませんから!』と言い捨て、天に視線を戻した。
───瞬く、光の粒
天から二人を見下ろすように。
その優しい星の微光は、煌めきを濁らせない。
そんな中、舞が祈るように手を合わせ、目を閉じる。
その祈る姿を、後ろから抱きすくめながら、ずっと見ていた。
伏せられた長いまつ毛、閉じられている桃色の唇。
祈る姿は、どことなく儚げで、綺麗で……
すぐにでも、全て奪ってしまいたい。
そんな、えげつない衝動に駆られる。
思わず片手でゆるりと長い艶やかな髪をかき寄せ、現れた白いうなじに唇を押し当てる。
すると、舞はぴくりと腰を跳ねさせ、か細い声を上げた。
「み、光秀、さ…あのっ……」
「なんだ」
「んっっ…光秀さん、は…願わない、んです、か?」
首に口づけられながら、舞がたどたどしく問いてくる。
ちゅっちゅっ…と静かに儚げに、甘い水音が響く中。
えげつない衝動を少し抑えて、なるべく落ち着いた声色で、それに答えてやる。