第45章 満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー / 光秀END
「もう、さっさと行きますよ、光秀さん!七夕飾りがある神社まで!」
舞が手を振り切って、そのまま踵を返し、ずかずかと歩き出す。
明らかに照れているのを隠していて…
頭から湯気が出ていそうで、本当に面白いな。
そんな事を思い、その小さな後ろ姿を追おうとした時だった。
「きゃあっ!」
「っっ!」
目の前で、舞は盛大にすっ転んだ。
べちゃっと言う音と共に、舞の身体が地面へ倒れ。
手に持っていた林檎飴も、手から離れて地面に転がった。
「おい、大丈夫か?!」
急いで駆け寄り、身を屈めて地面に這いつくばる舞の身体を起こす。
すると、舞は痛そうに悲鳴を上げた。
「あ、足が……」
視線を舞の足元に落とすと。
舞の履いていた草履の鼻緒がぷっつりと切れていて…
そして、白地の浴衣から伸びる、これまた白く細い足首が痛そうに赤くなっているのが解った。
「鼻緒が切れたんだな」
「ううう……」
「いきなりすっ転ぶから、何事かと思ったぞ。本当にお前は世話が焼ける…」
「う、ごめんなさい……」
「そんな足では、神社は無理だろう…仕方ない、行くぞ」
地面にしゃがみ込む舞に、背中を向けて座り込む。
『背中に乗れ』と言うと、舞が『ええ!』と何やら慌てた声を上げたので、首だけ後ろに振り返って舞に言った。
「どうせ歩けないだろう、乗れ」
「で、でも……」
「なんだ、抱え上げて運んでやった方がいいか?」
「それはもっと恥ずかしいです!」
「なら、選択肢は一つしかないな…ほら、おいで」
少し優しい口調で言うと、舞は渋々と言った様子で、背中にしがみつく。
そのままふわりと立ち上がり、しっかりと舞を背中に支えた。
「手当出来る場所まで移動するぞ、大人しくしていろよ?」
軽すぎる舞の身体を背中に負ぶい、そのまま歩き出す。
舞は何も言わず、静かに負ぶわれていた。
背中からは舞の体温を直に感じてしまい、また舞のもたげる頭が首筋に当たり…
その髪が肌に触る感触に、思わず心が疼いた。